口から火を噴く怪獣

発達障害児は、一般的にコミュニケーションが苦手な子が多いと聞きます。対人関係を築くのは、健常児でも苦手な子がいますが、発達障害児ではそれが障害特性の1つでもあり、親御さんにとっても悩みの種の1つでもあります。私も息子とコミュニケーションをどのようにして築いていけばいいのかわからずに、頭を抱えていました。それまでも、一緒にお風呂に入ったり、抱っこ(なぜか私がすると嫌がりましたが)したりくらいのスキンシップはありましたが、息子のことばが出ていないため、会話でのコミュニケーションは皆無でした。

一般的にコミュニケーションは、ことばによる会話からスタートすると思います。息子はことばが出てくるのが遅かったため、通常の幼児が1~2歳頃に発するような簡単な単語が3歳を過ぎた頃にやっと出てきた感じでしたので、当時は、生涯意味のあることばが出ないのではないかと、とても心配しました。(当時の書籍に自閉症児の3割は、生涯意味のある言葉を発することはないとの記述があったため)

3歳以前の息子は、喃語ばかりでほとんど意味のあることばを発することはありませんでした。当時の息子のお気に入りの遊びは、物を1列に並べることでした。並べる物は特にこれといったものはなく、周囲にあるすべての物です。それはおもちゃだったり、ビデオテープだったりさまざまです。この遊びで息子にとって大事なことは、並べた後にその位置を確認して、安心することです。(並べ方に特徴があるのかよくわかりませんが、これも自閉症のよくある障害特性の1つであるようです)

息子は並べた物をさまざまな角度から観察しているようで、それぞれの位置関係をよく記憶していました。なぜ記憶していたとわかるかというと、息子がいないときに並べた物の位置を少しでもずらしただけで、息子が戻ってきたときに前との並び方の違いを認識して、自分の縄張りを侵されたかのようにパニックを起こしたからです。この記憶力の高さは、サバン的能力だったのかもしれません。

息子が物を並べているときは、私がどんなに話しかけても無視されました。無視しているというよりは、まるで芸術家のように何かの建造物の創作にでも没頭しているような集中力を発揮していて、私の声がまるで息子には届いていないようでした。

私は、息子とのコミュニケーションをとれるようにするためには、息子を芸術的なファンタジーの世界からこっちの現実世界に引き戻す必要があると判断しました。そこからの私の行動は、ゴジラ(怪獣)になることでした。息子が丹精込めて作り上げた建造物を壊しました。息子はその都度パニックを起こしました。しばらくの間は、息子が建造物をつくる、ゴジラが出現し建造物を壊す、息子がパニックというサイクルを繰り返しました。

それを繰り返してくると息子に耐性ができ始めたようで、建造物を壊してもあまりパニックを起こさなくなりました。また、しばらくすると建造物自体を作ることもしなくなったのです。これでやっと、息子とのコミュニケーションがとれる状況になったと思いました。

私のこれまでの一連の行動は、ひどすぎるのではないのかと批判される方がいるかもしれません。しかし、これまで、息子に対しては穏便な方法で息子とコミュニケーションを取ろうと何度も試みましたが、まったくうまくいきませんでした。息子に対して優しく対応しても、まったく効果がなかったのです。そこで、やむなく、親としてはここで一大決心をしました。

上記で私のとった行動は、息子がパニックを起こすとわかっての行動です。親としては、つらい選択です。しかし、息子をより良い方向に導くためには、何か強い刺激を与える必要があると考えての行動でした。これも、親の深い愛情からくる行動です。

私はこれまで息子をより良く育てるために、さまざまな局面において息子への対応はどうあるべきなのか、深く考えてきました。それは、障害特性を改善するにはどうしたらいいのか、しつけはどうあるべきなのか、協調性を育てるにはどうしたらいいのか、適切な親子関係はどうあるべきなのかなど多岐にわたります。そして、考えるだけではなく、それを息子に実践してきました。

実践では、最初は優しく諭すように、それでも親の思いが息子に伝わらない場合には、心を鬼にして、強い態度で対応するようにしました。その結果、徐々に息子に変化が現われました。これにより、息子が良い方向に成長していると手応えを感じることができたのです。

上記の建造物の例では、息子は自分の世界に没頭して、私の声が届かない状態でした。ですから、この状況を改善するためには、息子の意識を自分に向けるようにしなければならないと考えたのです。私のこれまでの行動は、そのためのものです。その結果、やっと息子の意識を自分に向けることに成功しました。そして、息子の意識がこちらに向いたことにより、息子に対する子育てが可能になったのです。

ここで得られた結論は、ときには、毅然とした態度で対応しなければ、息子に親の深い思いは伝わらないということです。これも、親の深い愛情なのです。中途半端な優しさでは、かえってわが子のためにならないときもあります。そして、わが子が前向きに取り組むようになったり、できるようになったりしたら、満面の笑みで褒めてあげることです。これが、最終的にたどり着いた私の結論です。

息子とのコミュニケーションをとるきっかけができた私は、今後息子とのコミュニケーションをさらに深めることができるように、その後もさまざまな工夫をしていきました。この息子とのコミュニケーション関連記事は、10回シリーズとなっています。

息子とのコミュニケーションを深める過程で、息子のコミュニケーション能力のアップにとどまらず、結果的に以下の観点でも息子にとって大きなメリットがあったと思います。ですので、みなさんにもぜひ、おすすめします。

<息子とのコミュニケーションを深める過程で、得られた効果>
  1. 息子のコミュニケーション能力のアップ
  2. 息子のリスク管理
  3. 就労スキルのアップ
  4. こだわり、常同行動の軽減
  5. 体力の向上
  6. 息子の就労の継続
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