家庭と学校の連携。握手の図。

前回は、発達障害のお子さんの就学先の環境に、親御さんがあまり良くない意味で流されやすい傾向にあることをお話ししました。特に普通学級は、発達障害児には過酷な環境であり、さまざまなトラブルが発生するリスクがあります。

トラブルにより、親御さん、お子さんがともに疲弊してしまい、本来ならば期待できたお子さんの成長が阻害されてしまうことがあること、二次障害の恐れがあることをお話ししました。そのような状況で、「就労を実現するための最低条件」のスキルを習得できないことも懸念されることも、お伝えしました。今回はその続きです。

<就労を実現するための最低条件>
  1. 最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力、簡単な判断能力)
  2. 就労スキル(清掃の仕事の場合は、清掃に関するスキル)
  3. ある程度の体力
  4. 最低限のコミュニケーション能力
  5. 協調性

「就労を実現するための最低条件」については、こちらも合わせてお読みください。

発達障害のお子さんの就学先の環境に、親御さんがあまり良くない意味で流されやすい傾向にあるというのは、普通学級だけではありません。特別支援学級でも、特別支援学校でも事情は異なりますが、流されやすい状況があるという意味では、同じようなことがいえます。

ですから、お子さんの就学先がどこであれ、親御さんは、将来のお子さんの目標をしっかりと踏まえて、途中で目標を見失うことのないように頑張っていただきたいと思います。

そして、「就労を実現するための最低条件」のスキルを、少しでもアップできるように意識した子育てが重要だと思います。

就学先候補としての特別支援学校

特別支援学校は、障害者教育を前提とした学校なので、発達障害児に対してもケアが充実しています。お子さんだけではなく、親御さんに対してのケアも期待できます。特別支援学校にいる間は、親御さん、お子さんともに特別な対応をしてもらえるので、在籍中は親子ともども悩みも少なく、穏やかに学校生活を過ごすことができると思います。

ですから、特別支援学校は、良く言えば理想的な障害児教育の場だと思いますが、悪く言えばぬるま湯すぎて、お子さんの成長を考えた場合、少し緩慢になってしまう懸念があります。

特別支援学校では、普通学級や特別支援学級とは違い、お子さんをサポートしてくれる先生の数が充実しています。まさに痒い所に手が届くくらいのケアやサポートが期待できますので、親御さん、お子さんともにその環境に慣れてしまうと、先生が全部やってくれるので、自分で危機感をもって対応できなくなってしまうかもしれません。

特別支援学校の問題点は、①障害者福祉の観点での対応と②障害者教育の観点での対応との匙加減がむずかしいところにあるのかもしれません。

障害者福祉の観点で考えれば、障害者はその障害の程度にもよりますが、障害に対する手厚いケアが必要であるという考え方です。一方、障害者教育の観点で考えれば、障害者の自立支援が目的ですので、できる限り自分でできるようにするようなサポートをしていくという考え方です。この2つの考え方はまったく正反対の考え方ですが、どちらも正しい考え方ですので、この2つの考え方のバランスが大事になってくるのだと思います。

例えば、特別支援学校では、在籍する児童・生徒のためにスクールバスを運行している学校がありますが、在籍するすべての児童・生徒をカバーしているわけではありません。障害者福祉の観点と障害者教育の観点でのバランスを取りながら、運用しているようです。
※このスクールバスは、通常の路線バスとは異なり、利用する児童・生徒の自宅近隣まで迎えに行き、学校まで送迎します。(幼稚園バスと同じような運用です)

障害者福祉の観点では、障害児のなかには自力での通学が困難な児童・生徒がいますから、そのような障害児に対するケアとして、スクールバスの運行が必要ということになります。そして、スクールバスを利用する児童・生徒は、通常は自力での通学が困難な子どもが対象になろうかと思います。

一方、障害者教育の観点では将来の自立(就労の実現など)を考慮すれば、将来の会社への通勤を想定して、学校へは自力で通学できるようにするため、スクールバスは利用しないのが前提だと思います。

ですが、実際のスクールバス利用状況は、自力での通学ができそうな児童・生徒もいるようです。ですが、それがいけないと批判をするつもりはありません。家庭の事情もあるでしょうし、児童・生徒のメンタル的な問題(自力での通学を怖がっているなどの問題)が存在するのかもしれません。

特別支援学校ではスクールバスでの通学も含め、学校の先生のサポート内容ついては、先生と児童・生徒およびその保護者の間で話し合いにて決定されます。もちろん、児童・生徒の現状を踏まえて、無理のないペースで成長を促せるように「個別支援計画書(IEP)」が作成されます。ですから、特別支援学校ではIEPを基づいて児童・生徒に対して、さまざまな指導が行われます。IEPに基づく手厚い指導がわが子に施されるため、安心しきってしまう親御さんが少なくないのではないでしょうか。

本来、学校での先生による指導だけでは、子どもに対して十分な成長を促すのは不十分です。やはり、学校での指導と家庭での子育ての両方の連携により、より大きな成果が期待できるものと思います。しかし、学校の先生の手厚い対応をうけてそれに慣れてしまうために、子どもの成長に関して、学校に多くを依存してしまう親御さんが、多いのではないかと懸念しています。

人間は誘惑に弱い生き物です。こういう話をしている私自身も、とても人のことを偉そうに言えるような立場にはありません。私自身も、わが子の子育てで学校の先生が手厚い対応をしてもらえたならば、楽な方向に流されていたかもしれません。私が、息子を小学校から特別支援学校に小学校から入学させていたら、もしかしたら、息子に関する事項のすべてを先生に丸投げしていたかもしれません。

ですが、発達障害のお子さんの就労を目指しているとしたら、将来のお子さんの目標をしっかりと踏まえて、途中で目標を見失うことのないように頑張っていただきたいのです。特別支援学校では、親御さん、お子さんを取り巻く環境が良すぎて、つい本来の目標を見失いがちになってしまう傾向があります。

できれば、先生主導ではなく、親御さんが主導してお子さんの将来の就労に向けて、「就労を実現するための最低条件」のスキルを習得できるように、ぜひ、頑張っていただきたいと思います。

今回はここまでです。次回は、特別支援学級において、発達障害児の親御さんが陥りやすい問題点について、お話しします。お楽しみに。

今回のまとめ
特別支援学校という環境について

(メリット)

  • 親御さん、お子さんをサポートしてくれる先生の数が充実
  • まさに、理想的な障害児教育の場

(デメリット)

  • 先生が全部やってくれる環境なので、親御さん、お子さんともにその環境に慣れてしまうと、自分で危機感をもって対応できなくなってしまう
  • ぬるま湯の環境なので、親御さんが、お子さんの成長を促す気持ちが緩慢になってしまう懸念がある

デメリットの要素が親御さんに与える影響が大きいため

  • 親御さんが、お子さんの就学先の環境に流されてしまう
  • 「就労するのに必要な最低条件」のスキルを習得させることができなくなってしまう…
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