就労を実現するために「協調性」を育てよう

ハートと男の子

発達障害児の幸せな将来像を考えたとき、就労の実現および就労の継続は不可欠だと思います。将来の生活費用、余暇にかかる費用などの生活全般にかかる費用を、就労することで賄えるとしたら、発達障害児を抱える親御さんの悩みの多くが、解消されるのではないかと思います。

しかし、発達障害児にとって、就労の実現および就労の継続は、わりとハードルが高いので、それほど簡単ではありません。さらに、親御さんの多くは、健常児の就労の実現への道筋はわかっていても、発達障害児の就労を実現するには、どうすればいいかの情報があまりにも少ないため、想像がしにくいのではないでしょうか。そのため、健常児と同じプロセスでないと就労できないのではないかと、考えている方がほとんどだと思います。

ですから、健常児と同じように学力重視になりがちなのだと思います。普通学級で学力も健常児と同じでないと将来が心配だとあせってしまい、発達障害のお子さんに無理をさせてしまいがちです。無理をさせた結果、本来ならば習得できたであろう就労に必要な最低限なことを、習得できない事態に陥ることがあります。

発達障害児でも、以下の条件をクリアできれば、就労を実現できるチャンスは十分にあります。

<就労を実現するための最低条件>
  1. 最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力、簡単な判断能力)
  2. 就労スキル(清掃の仕事の場合は、清掃に関するスキル)
  3. ある程度の体力
  4. 最低限のコミュニケーション能力
  5. 協調性

このなかでもっとも重要な事項は、「協調性」です。協調性とは、自分を抑えて相手に配慮する気持ちや感情です。1対1の関係では、自分のしたいことや言いたいことを我慢して、相手とうまくやっていきたい、仲良くしたいという気持ちです。集団行動では、みんなと仲良くしたい、みんなで頑張りたいという気持ちです。集団行動ではもっとも重要なスキルです。コミュニケーション能力の根幹をなすものといっても、言い過ぎではないと思います。

協調性が育っていないと、他のどの事項が優れていても就労の実現はむずかしいと思います。仮に就労が実現したとしても、その就労を継続することは、やはりむずかしいと思います。なぜなら、協調性のない身勝手な行動は、集団生活の和を乱すからです。会社では、社員管理や社内のコミュニケーションを重要視しています。上司からの業務命令にしたがえないと、管理する立場からの評価は低くなります。会社内のルールを守れないと、社内の秩序を乱す存在として、また、他の社員の士気をも下げる存在として、疎まれることになります。

協調性は、相手に配慮する気持ち、相手を思いやる感情ですから、コミュニケーションが苦手な発達障害児の場合、苦手な分野なのかもしれません。ですが、発達障害児だから育たないなんてことはありません。私の息子も育てることができましたし、あなたのお子さんもきっと育てることができます。

なお、協調性は自然には身につかないものです。発達障害児の場合は、親が教えてあげないと協調性は育ちません。したがって、お子さんが幼いうちから協調性が育つような、子育てを心がけましょう。

今回は、協調性の重要性についてご説明しました。次回は、協調性を育てるヒント「しつけ」についてお話します。お楽しみに。