発達障害のお子さんの将来を考える 特別支援学校・高等部(高等特別支援学校を含む)を卒業しても高卒にならない?

今回のテーマは、発達障害者の学歴についてです。
この話題がインターネットの検索でわりと頻繁に引っかかってきます。
ですから、発達障害のお子さんを抱える親御さんのうちの多くの方が気になっている話題なのかも知れないと思いました。
親心と学歴

学歴は、一般的に中卒、高卒、大卒、大学院卒、短大卒、専門学校卒などがあります。
あまり一般的に知られていないと思いますが、特別支援学校(高等部)または高等特別支援学校を卒業しても、高卒の資格を得ることができません。
私もこの事実を知ったのは、息子が高等特別支援学校に入学後でした。学校側からは特段、この件に関する説明はありませんでした。
ですが、特別支援学校を卒業後に、仮に進学することを希望したとしても、大学受験資格はありますから、私は特段の問題はなさそうだと考えました。
ただ、健常者の新卒での就職活動では、学歴が重視されますから、高卒という資格にこだわりたい気持ちも理解できます。
- 特別支援学校(高等部)または高等特別支援学校を卒業しても、高卒の資格は得られない。
- ただし、大学受験資格は得られる。
学校教育法より(抜粋)
第一章 総則
第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
第八章 特別支援教育
第七十二条
特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。※特別支援学校(高等部)はあくまで「高等学校に準じる教育」であり「同等の教育」ではないため、「高卒の資格」を得られないことになる。
第九章 大学
第九十条
大学に入学することのできる者は、高等学校若しくは中等教育学校を卒業した者若しくは通常の課程による十二年の学校教育を修了した者(通常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者を含む。)又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする。※特別支援学校(高等部)を卒業時に12年の学校教育を修了したことになるため、大学受験の資格を得る。
中学校を卒業後に普通高校(特別支援学校ではない、通常の工業高校、商業高校などを含む)に進学した場合、卒業時に高卒の資格を得ることができます。
ですが、発達障害のお子さんでも知的に遅れがある子どもにとって、一般受験が必要な普通高校はちょっとハードルが高いです。
ですから、通信高校ならば比較的入学しやすい(一般入試がなく、書類選考と面接のみというところが多い)ため、高卒の資格を取得するための受け皿になっているようです。
特別支援学校(高等特別支援学校を含む)を卒業しても、高卒の資格を得ることができない根拠は上記のとおりですが、もっと具体的に言えば、特別支援学校(高等特別支援学校を含む)では、普通の高校の教科カリキュラム(現国、数学、英語、その他の教科)の学習単位が取得できないからです。
残念ながら、こればかりはしかたがないかなと思っています。
発達障害者の就職活動

発達障害のお子さんの就職活動では、大学進学をして健常者との真っ向勝負で、総合職としてやっていこうとする方を除けば、特別支援学校または高等特別支援学校から一般就労を目指す方がほとんどだと思います。
後者の就職活動は、通常、職場実習(インターンシップ)でおこなわれますから、仕事をしっかりやれるのかどうかの要素が特に重視されますので、学歴よりも実力重視という点で、健常者の転職活動に似ています。(※)
※健常者の就職活動において、新卒での就職活動は学歴が重要視されます。
その理由は、採用するにあたり、学歴しか大きな判断材料がないからです。
しかし、転職活動となると話が違ってきます。私も何度か転職経験がありますが、重要視されるのは前社での仕事の実績です。
転職活動の場合は、学歴よりも前社でどのような実績をあげて会社にどう貢献できたかの方が、はるかに重要になるからです。
発達障害者の就職活動は、職場実習(インターンシップ)での仕事の実績がそのまま採用可否につながりますから、仕事に対する実績が重視されるという意味では、健常者の転職活動に似ていると思います。
就労に大切なのは…

ですから、発達障害でも知的な遅れがあるお子さんの場合、会社から求められる仕事を十分にこなせるかどうかが重要になってきます。
したがいまして、学歴はあまり関係ないような気がします。
仮に、その後転職活動をすることになったとしても、前の会社での仕事内容や仕事ぶりなどが主な評価の対象となるでしょうから、やはりあまり学歴は気にしなくてもいいのではないかと思います。
特別支援学校の卒業者には、高卒の資格はありませんが、転職活動をする際には、履歴書に「特別支援学校(高等部)卒業」と記載することができます。
企業側はどちらかと言えば、高卒の資格の有無より前の会社でどのような仕事をしてきたのかとか、前の会社を辞めた理由が何だったのかを重視します。
この点からも、やはり発達障害でも知的な遅れがあるお子さんの場合、高卒の資格はあまり重視されないのではないかと思います。
通信学校で高卒の資格を得るよりは、特別支援学校で就労のスキルをしっかりと習得した方が余程、就職できる可能性が高いと思いますし、高等特別支援学校に入学できれば、その方がより就職できる可能性が上がります。
現在、既に就労が実現されている方は、今の仕事を全うして、仕事のスキルをさらに磨かれることが重要だと思います。

できれば、今いる会社での仕事を継続される方が良いと思います。
仮に会社の業績が悪くなり、リストラの対象となったりして、転職を余儀なくされた場合には、今の会社の仕事ぶりが評価されることになりますから、やはり、今の仕事を頑張る方が良いのではないかと思います。
本文は、発達障害のお子さんには学歴はいらないと、学歴を否定するものではありません。
一般的に発達障害のお子さんは、知的に遅れがある場合、現実問題として普通高校、大学への進学がむずかしい方々です。
そのなかで、就労の実現という果実を確実に手にするために、学歴にこだわる必要はないのではないかとの個人的な意見を述べさせていただきました。
これから、お子さんの進路を考えるうえで、ご参考になれば幸いです。
今回のまとめ
特別支援学校(高等特別支援学校を含む)の卒業資格
- 特別支援学校(高等特別支援学校を含む)を卒業しても、高卒の資格は得られないが、大学受験の資格は得られる。就労の実現の観点では、高卒の資格を得るよりは、就労スキルをしっかりと学ぶ方が良いと考える。
発達障害でも知的な遅れがあるお子さんに高卒の資格は必要か?
- 障害者枠で就職する場合、企業は高卒の資格はあまり重視していない。それよりも、仕事をしっかりやれるのかどうかの要素の方が重視される。
- 既に就労が実現されている方について、仮に将来、転職を余儀なくされた場合でも、今の会社の仕事ぶりが評価されることになる。高卒の資格の有無はそれほど重視されない。