発達障害児の学習は、将来の就労や将来の生活に必要なことを優先順位で整理して、少しずつ習得させてよう

前回、就労の実現と将来生活に必要であろう知識をお話ししました。
今回は、お子さんにそれを習得させるにあたって無理のないようにするために、内容を整理したうえで習得させる事項に優先順位を決めていく作業について、お話しします。
お子さんの習得に必要なものを整理
まずは、お子さんが習得に必要なものを列挙する作業です。
1つ目は、就労を実現するのに必要なものです。本ブログでは、発達障害のすべてのお子さんの就労を目指していますから、ここで必要な項目は、必須項目としての位置づけとします。
2つ目は、将来の生活で必要と思われるものです。こちらについても、すべて習得できた方が良いのですが、全部習得することは困難であり現実的ではありませんので、できる限り習得していこうということで、努力項目としての位置づけとします。(位置づけについては、ここでは私の考えで行いましたが、みなさんはお子さんの実情に合わせて設定してください)
1つ目は就労の実現
1つ目の就労の実現についての必須項目は、既に本ブログでもご紹介済ですが、以下のとおりとします。これをすべて習得していても、必ずしも就労が実現するとは限りませんが、習得できていれば、確実に就労できる可能性がアップしています。できれば、それぞれの項目について底上げをはかり、さらに就労を実現できる可能性を高めておきたいところです。
- (A)就労を実現するための最低条件
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- 最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力、簡単な判断能力)
- 就労スキル(清掃の仕事の場合は、清掃に関するスキル)
- ある程度の体力
- 最低限のコミュニケーション能力
- 協調性
※どれも必須項目なので、特段、優先順位をつけていません。(あえて、このなかで最も重要なスキルはどれかと問われれば、協調性です。協調性は、習得させるのも大変なので、早い段階から対応しておくことをおすすめします)
「就労を実現するための最低条件」および、それに関連する事項については、こちらで詳しく解説していますので、ご参照ください。
2つ目は将来生活の努力項目
2つ目の将来生活の努力項目については、以下のように、「共通項目(衣食住または衣食に共通で必要な項目)」とそれぞれ「衣の項目」、「食の項目」、「住の項目」というように分類してみました。
なお、各項目については、代表的なもののみを記載しました。各家庭では他にも必要項目があるでしょうし、優先順位も違ってくると思います。ですから、みなさんでそれぞれ必要な項目を付け加えたり、優先順位を変えたりするなど、家庭の事情を考慮しながら、お子さんに合った形でカスタマイズされることをおすすめします。
- (B)将来生活で必要となるので、できるだけ習得させた方が良い項目(努力項目)
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- 共通項目(衣食住または衣食に共通で必要な項目)
- 衣の項目
- 食の項目
- 住の項目
- お金の管理スキル
- 買い物スキル
- 清潔感スキル(※1)
- 携帯電話、スマホの料金管理、導入アプリの管理など
- 家電の知識や家電操作の知識など
- その他
- 洗濯スキル
- 衣類の収納管理スキル
- おしゃれスキル(※2)
- その他
- 賞味期限の知識
- 冷蔵庫内の管理(買った食材の賞味期限管理)
- 料理スキル
- 火の管理能力スキル
- 栄養管理スキル
- 献立管理スキル
- その他
- 電気、水道、ガスなどの公共料金の管理など
- 家の清掃、メンテナンス管理など
- 賃貸の場合、賃貸契約の管理など
- 持ち家の場合、メンテナンス、固定資産税の管理など
- 庭の手入れ
- その他
※「住の項目」のうち、家の清掃や庭の手入れ以外の項目は、相当に難易度の高い項目です。ここまでクリアすることができれば、1人暮らしが十分可能ですが、習得は相当困難ですし優先順位も低いですから、その他のもっと習得するべき事項がクリアできてからでも、遅くないと思います。
清潔感スキル(※1)の習得については、こちらもご参照ください。

清潔感、身だしなみは、どんな職場でも重要。職場によって求められるレベル感がまったく違います。環境に合わせた清潔感や身だしなみを!
おしゃれスキル(※2)の習得については、こちらもご参照ください。

息子がまだ中学生の頃のことです。ある特例子会社の社長さんの講演会で聞いたお話に衝撃をうけました。それを機に息子は美容院でオシャレにカットしてもらうように。
関連づけて一緒に習得させる方が効率的
(A)「就労を実現するための最低条件」は就労を目指しているならば、習得が必須の項目です。
(B)「将来生活で必要となるので、できるだけ習得させた方が良い項目(努力項目)」は、できるだけ習得させた方が良い項目ですので、努力項目です。
※就労を前提とする場合は、(A)の習得の方が優先されます。
それぞれの項目を見てみると、関連の深そうな項目があるのに気づいた方もいらっしゃるかもしれません。そうです。この2つの項目はまったく別ものではなく、関連性がありますので、お子さんに別々に習得させるのではなく、関連づけて一緒に習得させる方が効率的なのです。
例えば、
(A)の(1)最低限の学習能力のうち「簡単な四則計算能力」は、(B)の「(1)共通項目」のうちの「お金の管理スキル」「買い物スキル」と関連性が高いです。
お子さんに習得させるときには、両方のスキルを同時にアップさせることを意識していた方が、より効率的にお子さんに習得させることが可能だと考えます。

他にも、(A)の「就労スキル」は、家庭でも鍛えることが可能です。最も効率的な方法は、家庭でのお手伝いです。(B)では、「(1)共通項目」のうちの「お金の管理スキル」「買い物スキル」、「(2)衣の項目」のうちの「洗濯スキル」「衣類の収納管理スキル(乾いた洗濯物を取り込んだ後、きれいに畳んで収納)」、「(3)食の項目」のうちの「料理スキル」なども関連性が高いと思われますので、一緒にお子さんに習得させることが可能だと考えます。

なお、ここで気をつけるべきことは、お子さんの現在の能力レベルをきちんと見極めることです。例えば、いくら関連性が高いといっても、四則計算の習得が十分でないうちに、お金の管理スキルを学ばせようとしても、無理があります。今のお子さんのレベルに合わせて習得させていくことが重要です。
焦りは禁物です。焦って無理をすると、お子さん自身が習得を嫌がるようになってしまう恐れが出てきます。先は長いのですから、できる限り親子で楽しみながらできるような環境を整えつつ、少しずつ少しずつ前進していくことが大事なのです。
まとめ
お子さんに習得させる事項に優先順位をつける
(A) 就労を実現するための最低条件(就労の実現が前提の場合、必須項目)
(B) 将来の生活で習得した方が良い能力(優先順位をつけて、習得させる)
※ (A)と(B)の各項目のうち、関連性の高い項目は一緒に習得させると効率アップが図れる。ただし、お子さんの能力に十分な見極めが必要。
今回はここまでです。次回は「就労を実現するための最低条件」のうち、親御さん方が最も気にされている「最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力)」にスポットをあててみたいと思います。お楽しみに。