発達障害児の学習 「最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力)」具体的な学習方法について(算数編①)

「お買い物、ちょっと自信ないなぁ…」自身なさそうにしている男の子

前回、「最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力)」について、どこまで学習するのか、いつまで学習するのかについて、お話ししました。

今回は、その具体的な学習方法についてお話しします。

前回のおさらい

まず、前回のお話しについて、簡単におさらいします。将来の就労の実現を前提とすれば、どこまで学習するのかについてのゴールは、小学校卒業レベルです。また、それをいつまでに学習しなくてはならないのかについては、就労するまでです。ただし、高等特別支援学校を受験する前提の場合は、受験まで(中学3年に在籍時:試験時期については「募集要項」を確認してください)となります。高等特別支援学校に入学できれば、就職できる可能性はアップしますから、可能であれば高等特別支援学校に入学できるように、数年がかりで準備しましょう。

学習の具体的なすすめ方については、お子さんがどこに在籍しているかで変わってくると思います。

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普通学級に在籍の場合の注意点

普通学級に在籍している場合は、かなりハイペースで授業がすすめられていますので、知的に遅れがある発達障害児の場合、学習面では相当な負担が親御さんにかかると思います。普通学級では、担任の先生からのサポートがかなり限定されますから、通級指導教室でのサポートで不十分な場合は、家庭学習でカバーするしかないからです。経済的に余裕のあるお宅では、塾や家庭教師などを検討されるのもいいかもしれません。

発達障害児が、普通学級で授業内容をある程度理解できていることは、とても重要なことです。授業を理解できていない状態で授業を何時間もうけることは、とても苦痛なことだからです。それに時間の無駄です。他にも習得すべきものがたくさんあるのですから、その時間を別の何かを習得する時間に振り替えた方が余程有効に使えるのではないかと思います。

また、授業内容を理解できていないと、お子さんにとってとても退屈な時間となってしまうことから、黙って机に向かっていられず、教室を徘徊したり、授業妨害をしてしまうリスクが生じます。そうなると、担任の先生や他のクラスメートとトラブルが発生することになります。他のクラスメートにも授業をうける権利がありますから、とても大きな問題に発展してしまうことにつながります。ですから、授業についていけることが前提になります。

授業についていくことを前提にすれば、学習の基本は教科書だと思いますが、最初のとっかかりは結構大変かもしれません。息子の場合も結構大変でした。

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ここからは、普通学級、特別支援学級、特別支援学校に共通

算数は、買い物など実生活で使う計算を学ぶ教科です。その前提条件は、数字や計算の概念を理解できていることです。また、数字や計算の概念を理解できたとしても、実際の買い物などとの概念のマッチングをさせることは、とても大変な作業だと思います。具体的には、机上で教科書に書いてある計算と、実際の買い物するときの計算が同じということが、うまく理解できていないのです。

例えば、今、お子さんが100円を持っているとします。100円あれば、駄菓子屋でいろいろなものを買うことができます。でも、無制限に欲しいものが買えるわけでもありませんので、吟味して本当に欲しいものを買う選択をします。その選択をする際に、健常児であれば、ここで難なく四則計算を駆使して、100円で有効な買い物をすることができます。学校で習った四則計算が、買い物に役立つことを知っていますし、実際に使うことができることを十分に理解できているのです。

ところが、知的な遅れのある発達障害児の場合では、四則計算を理解させることも大変ですが、この四則計算が実際の買い物するときの計算に使えることも、なかなか理解することができないのです。ですから、親御さんがお子さんに四則計算を教える際には、このことを踏まえておくと、混乱は少ないと思います。

算数の最初のとっかかりは、数字の概念から始まります。例えば、リンゴの数と数字のマッチングだったりすると思います。(別にリンゴ以外でも良いです)

リンゴの数と数字のマッチングの図

数字の概念が理解できるようになってはじめて、実際の計算式での計算を始めることができます。計算式は1桁の足し算からはじめ、その後1桁の引き算を始めます。(最終的には、3桁くらいの計算が、できるようになっていることが理想です)数字の概念理解と計算式については、お子さんが十分に理解できるようになったと判断できるまで、徹底的にやることです。目安は、例えば、10問の小テストをやって3回連続で満点を取れるようになったら合格として、次のステップに進むなどです。

なお、数字の概念および計算の概念の学習と、実際の買い物については、最初は切り離して考えるべきだと思います。おそらく、無理やり理解させようとしても、理解できないのではないかと思います。では、買い物とかの練習はしなくてもいいのかといえば、買い物は生活のうえでとても重要なスキルですから、算数とは別ものの訓練として、早い段階から買い物をする経験を積んでおくことをおすすめします。

数学と計算の概念の習得については、こちらも参照してください。

なお、実際の買い物についても、算数の学習と同様にいきなりすべてを理解することはできませんから、少しずつすすめていくことになります。最初は、TVでよくやっている「はじめてのおつかい」からスタートです。その後も、少しずつステップアップしていくことになります。ただ、実際の買い物となると、計算の桁数がとても大きくなることと(3桁以上の計算が必要です)、消費税の存在もやっかいな問題でので、これをどうクリアしていくかも課題になります。

お子さんが、お買い物マスターになるまでの道のりはなかなか遠いですが、到達への手順をスモールステップで区切って少しずつクリアしていけば良いのです。これにつきましては、親御さんがその習得プロセスについて十分に理解していれば、わが子へ教えやすいのではないかと思います。それについては、こちらでわかりやすく詳細にご紹介しています。きっと、あなたのお役に立てると思います。

こちらでは、基本的な子育てとして「協調性」の育て方から、就労を前提とした就学先の選択や就学先でのトラブル対策のヒント、就労の実現から就労の継続まで、息子を事例としてどうすればよいのかについても、詳しく解説しています。あなたのお子さんの子育てから就労まで、トータルでサポートできる構成となっています。お子さんを将来の幸せな生活に導いていくために重要なことは、行き当たりばったりではなく、十分な根拠に基づいて計画的にすすめていくことです。子育てから就労の実現まで、親御さんがやるべき対応に関する情報を、とてもわかりやすくコンパクトに、あなたにお届けします。

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今回のまとめ

数字の概念と計算の概念を理解していても、教科書で習っている計算と買い物をするときの計算が、同じものとして理解するのがむずかしい。

  1. 最初は、「四則計算能力の習得」と「実際の買い物の経験」を、一旦切り離して別ものとしてそれぞれを練習させる。
  2. 「四則計算能力の習得」度があがり、「実際の買い物の経験」を十分に積んだ時点で、買い物する際の計算が、算数で習った計算と同じものであることを理解させます。

今回はここまでです。次回は「最低限の学習能力(簡単な四則計算能力)」を習得するための教材選び、具体的な学習方法などについてお話しします。お楽しみに。

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