発達障害児の学習 「最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力)」具体的な学習方法について(算数編②)

前回は、発達障害児でも知的な遅れがある場合、算数では、数字や計算の概念を理解できていないと、お買い物スキルの習得はむずかしいとことをお話ししました。
また、数字や計算の概念を理解できても、実際の買い物などとのマッチングをさせることは、とてもむずかしい作業であることもお話ししました。
数字の概念を十分理解できるようになってから、計算の概念を理解させるようにしましょう。この順番もとても大事です。足し算がわからない子どもに、掛け算を理解させることができないのと理屈は同じです。数字や計算の概念をお子さんに理解させることはとても大変な作業ですが、近道はありません。何度も何度も演習を繰り返して、理解させるしか方法はありません。
数字や計算の概念を理解させる方法
今回は、具体的に教材をつかって、数字や計算の概念を理解させる方法からお話しします。具体的な演習は、算数ドリルなどを利用するのが、もっとも簡単な方法です。理解させるのに何度も繰り返しの演習が必要になりますから、算数ドリルの場合は、複数種類が必要になると思います。
発達障害児のなかには、知的な遅れがある子どもでも、同じ演習を複数回すると答えを覚えてしまう子どもがいるからです。答えを覚えていて演習で正しい答えが書けたとしても、内容を理解しているとは言えないからです。ですから、お子さんの理解度を見極める際には、違う算数ドリルで対応するなどの注意が必要です。
最初に算数に触れる際のおすすめの教材は、公文
算数ドリルでは、公文の算数ドリルが最も優れていたように思います。公文のドリルは算数だけではなく、国語ドリル、幼児教材ドリルから息子の学習に利用していました。わかりやすい構成と、スモールステップで学習内容が進んでいくので、教える親の負担も軽く、学習する息子にも無理なくできました。息子の学習能力アップに随分と貢献してくれたと思いますので、ぜひ、おすすめします。
就学前は、「幼児ドリル」シリーズで学習させていました。「たす1」から「たす9」をくり返し練習していくので、自然と習得できました。子どもが「見て」「分かる」仕様なので、親子にとって無理なく進められる、よくできた教材でした。
小学生になってからも引きつづきお世話になった『小学ドリル』シリーズ。算数は「計算」「数・量・図形」「文章題」と分野ごとに分かれているので、的を絞って取り組めるのがとてもよかったです。こちらも、スモールステップとくり返し練習で習得できるので、基礎固めには最適だと思います。
発達障害児が、最初に算数に触れる際のおすすめの教材は、公文です。公文の教室には、息子が幼稚園の年長から、中学生まで通っていました。公文は、学習の基礎の基礎からやりますし、また、その基礎もこれでもかというくらい徹底してやりますので、しっかり定着します。家庭学習用の宿題のプリントも持ち帰りますので、学習習慣も身につきます。特に発達障害児でも知的に遅れのあるお子さんにはぴったりの教材だと思います。
公文教室では、先生が子どもの理解度の見極めもやっていただけるので、お子さんの習熟度がわかりやすい点もメリットです。発達障害のお子さんが初めて算数に触れるときの教材として、今後算数の難易度が上がった際でも、基礎を学ぶ教材としては、申し分ないと思います。
教科書に沿った学習は進研ゼミで
お子さんの理解度がすすんで、若干応用問題も学ばせたいとなったときは、公文では物足りないかもしれません。息子の場合は、公文と進研ゼミを利用していました。基礎部分は公文で、基礎部分の復習と簡単な応用部分は進研ゼミで補完していました。進研ゼミの教材は、算数の考え方についてわかりやすい解説があって、親御さんの立場で見ても、お子さんに数字の概念や計算の概念を理解させるのにはやりやすい教材だと思います。
さらに進研ゼミの教材は、今では紙スタイルでの学習とタブレットスタイルでの学習を選択することができます。私個人の勝手な見解としては、鉛筆で書く行為が記憶を増幅すると考えていますので、紙スタイルでの学習の方が良いように思います。ただし、LD(学習障害)などの紙スタイルでの学習に向かないお子さんには、タブレットスタイルでの学習も選択できますので、その点では選択肢の幅があって、良い教材だと思います。
進研ゼミの教材は、基本的に学校の教科書に沿った内容になっていますから、この点でも優れた教材と言えます。ただし、前回お話ししましたが、お子さんが普通学級に在籍の場合、授業スピードはかなり速いですから、次から次へと新しいことをお子さんに学ばせる必要があります。お子さんにとっても大きな負担です。また、親御さんにとっても大きな負担です。ついイライラしがちですが、ここはこらえて頑張りましょう。
親御さんがイライラしたときは…

親御さんがイライラする理由は、お子さんがなかなか理解できなくて、学習に時間がかかるからです。ですが、ここは発想の転換を図りましょう。健常児と比較すると時間はかかりますが、「時間がかかってもきちんと習得できていて、わが子はエライなあ」と考えてみてはいかがでしょう。 健常児と違ってお子さんの頑張りは、とても大きいと思います。褒めるに値する頑張りなのですから、そう考えれば、あなたのイライラは解消されるはずです。
時には戦略も必要

お子さんが普通学級に在籍の場合は、授業にある程度ついていく必要がありますから、多少の無理はしかたがないと思います。ですが、限界はあります。時間をかければどんな子どもでも、ある程度の学習は可能ですが、普通学級の場合は、どんどん授業が進みます。健常児でも落ちこぼれてしまうお子さんがいるくらいですから、発達障害で知的に遅れのあるお子さんの場合は、授業についていくのがとても大変です。学年を追うごとに学習内容もむずかしくなっていきます。一般的に「小4の壁」と呼ばれる現象も、ここから言われるようになったのだと思います。
授業についていけないと判断される場合には、特別支援学級や特別支援学校への転籍も視野に入れて検討することをおすすめします。なぜなら、あなたのお子さんの幸せな人生の目標を考慮したとき、普通学級に在籍することが最終目標ではないからです。途中経過は、どうでもいいと言えば語弊がありますが、普通学級の在籍に強くこだわる理由がないからです。最終的に、就労が実現できれば良いという考え方であれば、必要な時期までに必要な学力を習得できれば良いのです。
なお、お子さんが普通学級に在籍している場合、教科書の単元の後ろの方に演習問題があります。これもすべて理解することが理想的ですが、すべて理解できなくても問題は少ないと思います。文章問題はとてもむずかしい課題ですが、そのなかでも簡単な問題が理解できれば十分です。息子もむずかしい文章問題はパスしていましたが、就労するのに大きな影響は、ありませんでした。
特に学校でのテスト対策を気にされているとしたら、応用問題の難しい問題はあきらめて、基本問題と簡単な応用問題を確実に取る作戦で対応するのが、現実的ではないかと思います。息子も、進研ゼミの教材をすべて利用したわけではなく、基本問題と簡単な応用問題のみを利用しました。むずかしい応用問題はできなくても、将来にそれほど大きな影響はないだろうと判断して、最初から捨てていました。それでいいのではないかと思います。
今は選択肢も豊富です
息子の小学校時代は、算数ドリルや公文教室などの塾などはありましたが、通信講座は進研ゼミくらいしかなく、あまり選択肢がなかったように思います。費用は公文教室も、進研ゼミもそれなりにかかります。今はもう少しお安い通信講座などもありますので、検討されてみてはいかがでしょうか。
最後に

発達障害のお子さんの学力向上を図るのに教材選びはとても大事ですが、もっと大事なことがあります。それは、親御さんが一緒になって学習することです。そして、少しでもできることが増えたら、褒めてあげることです。お子さんにとって親御さんに褒めてもらえることが、最高のモチベーションアップにつながる出来事であることを、十分に理解されたうえで、頑張ってください。
お子さんとの勉強については、こちらもご参照ください。
まとめ
- 公文教室
- (メリット)基礎から徹底しているので、発達障害のお子さんに最適。
- (デメリット)応用問題には不向き。料金が他の教材との比較で若干高いかも。
- 進研ゼミ
- (メリット)教科書に沿った内容。基礎から応用問題まで充実。親御さんがお子さんに教える際にも、わかりやすい内容。
- (デメリット)料金が他の教材との比較で若干高いかも。
※ 今はもう少しお安い通信講座などもあり。要検討。
※ 教材選びよりも、親御さんが一緒に褒めながらの学習が一番重要。
今回はここまでです。次回は「最低限の学習能力(簡単な読み書き能力)」を習得するための具体的な方法などについてお話しします。お楽しみに。