発達障害の息子がグングン成長できた子育て法

発達障害児の子育てにあたり、お父さんを味方にすることを提案しましたが、そのためには、お父さんを良く知ることが重要です。そこで、前回は、一般的なお父さんはどういう考えでいるのかを検証する前に、私の実体験をお話ししました。今回はその続きです。
自閉傾向が重かった息子

息子が「自閉症の疑い」と診断をうけたのは2歳半のときです。その後すぐに、療育手帳の申請をしましたが、その結果は判定B(中度)でした。同時期に地元の療育センターの通所が決まりました。その療育センターは、自閉症でもわりと自閉傾向の重い子どもが多く通所していたのですが、妻が言うにはそのなかでも、息子の障害の程度が重かったのではないかと感じていたそうです。息子は幼児にしては発育が良かったせいか、体力だけは人一倍あったため、センターでもやりたくない課題のときには、かんしゃくを起こしながら、子ども用のいすを妻に向かって何度も投げてきたといっています。
自宅でも息子の傍若無人ぶりは変わらず、気に入らないことがあるとすぐにかんしゃくを起こして暴れる子どもでした。あるとき、息子は興奮しすぎてガラス戸に頭から突っ込んだときには、さすがにヒヤリとしました。幸いにも軽症ですんだのですが、いつもこんな感じです。
無駄に体力があるがゆえに一度かんしゃくに火がつくと、もう手がつけられない状態になってしまいます。そのとき私はまだ20代で体力に自信があったのですが、息子がかんしゃくを起こす都度、危険回避のために暴れないように強く抱っこしていました。ですが、幼児の息子のどこにこんな力があるのか不思議なくらいの渾身の力で、抵抗をしてきました。幼児の力でさえ抑えるのがやっとなのに、この先息子が成長したときは、もうどうにもならないと絶望感でいっぱいでした。
デモデモダッテチャンだった私

ですが、不思議なことにこんな状況にもかかわらず、私はこんな息子に対して深い愛情を感じていたのです。息子の障害は、息子自身に非があるわけではありませんでしたので、このままでは息子が不憫で仕方がなかったのです。また、妻に対する後ろめたさもありました。こんな状態の息子の子育てを妻ひとりにさせていたことへの後ろめたさと、これまで家庭をほとんど顧みていなかったことに対する反省でした。
このままでは、息子のかんしゃくを将来に向かって抑えていくことはむずかしいことですから、おそらく将来は、障害者施設に息子をお願いするしかないのかもしれないと漠然とした不安があったのです。私は息子を愛していましたから、それはとても耐えられないことでした。
何とか息子と生涯、穏やかに一緒に生活できる道はないものだろうかと、私はずっと考えていましたが、そんなに簡単に結論がでるわけがありませんでした。そんなに簡単なら誰も、わが子が自閉症や発達障害で悩む人などいないはずですから・・・。
私が最終的に出した結論は、息子の子育てに私自身が参加することでした。それも、私自身が主導となった子育てをしなければ、とても現状を打開することできないと、悲壮な決意でした。息子の障害の程度が重いことに加えて、ひどいかんしゃくで、日常生活に相当な支障をきたしていましたから、もう一刻の猶予もないと考えたのです。また、中途半端な気持ちで臨んだとしても、かえって状況を悪くしかねないとも考えたのです。もう、それほどまでに私たち夫婦は、心身ともに追い詰められていたのです。
私の子育て参加の決意に至った大まかな経緯は以上です。文章にしてみると大したことはないと思われるかもしれませんが、息子の診断からここに至るまでに、既に半年以上が経過していました。それまでの長い間、あーでもないとか、こーでもないとか、どうしたらいいかわからないとか、自信がないとかさまざまな考えが、私の頭の中で錯綜していました。決心するのに半年もかかるなんて、我ながらデモデモダッテチャンぶりに呆れてしまいます。
確かな成長を期待できる子育て方法を模索

その後、私は試行錯誤しながら息子の子育てをしていくわけですが、ただ行き当たりばったりの子育てをしていたわけではありません。どうすれば、息子の障害が改善するだろうかとか、息子の意識をこちらに向けるにはどうしたらいいだろうかとか、できる限り、息子の状況を分析しながら、だからこうすればこうなるだろうかとか、理屈づけて子育てするように心がけたのです。そうして得られた結果から、少しずつ改善を加えたり、まったく新しく考えたことを実践するなど、何度も何度も試行を繰り返して、子育ての成果が期待できる最善と思える子育て方法を模索していきました。
サラリーマンのお父さんならば、誰でも良く知っている「PLAN(計画) ⇒ DO(実行) ⇒ CHECK(分析) ⇒ ACTION(改善)<PDCAサイクル>」を、息子の子育てに実践しただけです。そうしないと行き当たりばったりの子育てになってしまい、息子に対してどういう対応が良かったのか、悪かったのかわからなくなってしまい、何が何だか良く分からなくなってしまうからです。
今思い返すと、最終的に息子の障害特性の大幅な改善ができたこと、短期間に大きく成長できたことが決して偶然ではなかったと自信をもっていえます。その理由は、そのときそのときで、息子の状況を分析して、それに対してきちんと理屈づけした子育てをしてきたからです。そして、問題があればやり方を変更したりしながら、息子の成長を促していったからです。(PDCAサイクルを利用した子育てを実践したからです)その具体的な一例として、私が試した子育てについては、こちらをご参照ください。
さまざまな試行錯誤を繰り返した息子の子育てをとおして、最終的に私が得た結論は、子育てでもっとも重要なことは、「適切な親子関係の構築」「協調性の育成」です。この2つは、言葉は違いますが、裏を返せば実は同じことなのです。そして、協調性を育てることができれば、発達障害児の現在、そして今後将来にわたって起こるであろうトラブルの大半を回避できると考えています。また、集団生活でもとても重要です。学校生活では不可欠ですし、就労の実現、就労の継続にも深くかかわってくるものです。
ですが、「適切な親子関係の構築」「協調性の育成」は、そんなに簡単ではありません。私の場合は、発達障害児の子育て情報があまりにも少なかったため、ここに至るまでにはかなりの遠回りをした感がありますが、みなさんにはできる限り効率的に子育てをしていただければと思います。
「適切な親子関係の構築」「協調性の育成」のやり方について、こちらで詳しくご紹介しています。そして、「適切な親子関係の構築」「協調性の育成」の2つは、裏を返せば実は同じであること、協調性を習得すれば、現在そして将来にわたって起こるであろうトラブルの大半を回避できる理由はどうしてなのかについても、こちらで詳しくご紹介しています。
きっとあなたの子育てのお役に立てると思います。

まとめ
- 息子の状況(2歳半)
- 息子の療育手帳の判定は、B(中度)
- 人一倍体力のある息子、療育センターでも自宅でも、気に入らないことがあるとすぐにかんしゃくを起こして暴れる、それも疲れて眠るまで何時間も…
- 私の子育てへの参加を決意するまでの経緯
- こんな状況にもかかわらず、私はこんな息子に対して深い愛情を感じていた
- 息子の障害は、息子自身に非があるわけではなく、息子を不憫に思っていた。また、妻に対する後ろめたさと、これまで家庭を顧みていなかったことを反省
- 息子の子育てに参加を決意(ここまで、息子の診断から半年も経過)
- 息子と生涯、穏やかに一緒に生活できる道の模索
- 「PLAN(計画) ⇒ DO(実行) ⇒ CHECK(分析) ⇒ ACTION(修正実行)<PDCAサイクル>」にて、子育ての成果が期待できる最善の子育て方法を模索
- 最終的に得られた最善の子育て方法
- 「適切な親子関係の構築」「協調性の育成」
PDCAサイクルの使用事例
※注意!これはあくまでも事例です。
ミッション:偏食を改善しよう
現状分析:息子はいつでもお菓子を食べたがって、ごはんをほとんど食べない。お菓子をあげないと、かんしゃくを起こす。
① PLAN(計画) (どのような方法で、改善させるかのプラン)
ごはんの時間前に息子がお菓子を欲しがったら、少しだけ与えて気持ちをそらす。後は、ごはんの時間まで我慢させて、ごはんを食べることができたら、ご褒美にお菓子をあたえる。
② DO(実行)(プランを実行した結果)
お菓子を少しだけ息子に与えたところ、もっと欲しがってかんしゃくを起こした。仕方がないので、いつもどおりにお菓子を与えてしまった。案の定、ごはんの時間になっても、息子はごはんをほとんど食べなかった。
③ CHECK(分析)(プラン実行した結果、失敗した場合はその原因分析)
失敗の原因は、お菓子を少しでも与えてしまったこと。息子の場合、お菓子を少しだけ与えても、まったく与えなかった場合でも、かんしゃくを起こすだろう。どちらにしてもかんしゃくを起こすならば、お菓子をまったく与えなければ、結果はどうなるだろうか。
④ ACTION(改善)(最初のプラン①を③の原因分析に基づいて、プランの内容修正)
息子はかんしゃくを起こしたが、そのままにした。ちょっとかわいそうな気もするが、ここでお菓子を与えてしまうと偏食が改善できない。ここは親としてもつらいところだが、このままにしよう。結局、息子は、ごはんを食べなかった。
⑤ CHECK(分析)(プラン実行した結果、失敗した場合はその原因分析)
ごはんを食べなかったので、息子は相当おなかがすいていることだろう。現状では、まだ、失敗したとはいえないので、このまま継続していこう。息子は相変わらずお菓子を欲しがるが、お菓子は与えない。「ごはんなら、いつでも食べれるよ」と伝えている。しかし、水分補給(ジュースはダメ。水またはお茶を与える)だけはしっかりさせておこう。息子を見ているのはつらいが、ここはもうひとふんばり。
⑥ ACTION(改善)(前回の修正プラン④を⑤の原因分析に基づいて、プランの内容修正)
今回は、前回⑤に基づきプランの修正はしない。
⑦ DO(実行)(修正プランを実行した結果)
最初は、かんしゃくを起こしていたものの、息子から「ごはんを食べる」と言ってきた。相当おなかがすいている様子。ごはんをおかわりした。ごはんを食べることができたので、お菓子のご褒美を与えた。
ミッション成功

今回、ミッション成功して偏食を克服できた。息子は、今でもお菓子を欲しがるけれど、「ごはんを食べてから」というと、かんしゃくを起こすことなく引き下がるようになった。我慢することも習得できたようだ。
いかがだったでしょうか。上記の事例は必ずしもこうなるわけではないかもしれませんが、成功する可能性が高いと思われる事例をのせてみました。お子さんが頑なな場合には、問題解決にもう少し時間がかかるかもしれません。
大事なことは、問題解決に向けて行き当たりばったりで対応するのではなく、理論的にプランを立てて対応することです。うまくいかなければ、プランを少しずつ改善しながら、うまくいくまで対応することです。これが、問題解決の基本です。こうすることで、成功する可能性が飛躍的にアップします。
PDCAサイクルを実践していただけるよう「PDCAシート」を作ってみました。お役に立てれば幸いです。
