発達障害児を抱えるお父さんをどう攻略する?(気持ちをうまく動かすポイント)

前回は、お父さんを味方にするためには、お父さんを良く知ることが重要であり、具体的に、一般的なお父さんはどういう考えでいるのかについて、考察しました。
今回は、これを踏まえて、お父さんに行動を起こしてもらうために、どうしたら良いのかを一緒に考えていきましょう。お父さん攻略のカギの1つは、お父さんの心情を理解することです。
ケース1 高学歴で仕事もデキるお父さん
私が大学卒業後に入社した会社で隣の部署に、仕事がすごくできる2つ上の先輩がいました。出身大学(六大学でも偏差値の高い方の大学です)も相当にいい大学です。頭の回転もとても良く、ちょっとクールな感じの先輩でした。
その後、お互い転職を経験して、15年後くらいに偶然にも同じ転職先の会社で再会しました。相変わらず、仕事もできて頭の良さも以前のとおりでしたが、私と同じお子さんが発達障害でした。
先輩自身も子育てに参加しているのか聞いたところ、奥さんに後ろめたさはあるものの、以前の私と同様に、ほとんど子育てにはタッチしていないとのことでした。お子さんの子育てにも自信がもてていないようでした。
「妻に対して後ろめたさがあるので、子どもの療育のための費用を必死で稼いでいる」という先輩の横顔は少し疲れているようでした。先輩の収入はそれなりにあったはずですが、お子さんの療育のために、毎日隙間なく療育施設をいくつも掛け持ちしていたため、療育の費用がかかり過ぎると嘆いていました。
ケース2 世間体を気にしていたお父さん
もうひとり、お父さんの事例をご紹介します。こちらは、私より10歳くらい若くて、会社では私の後輩にあたるお父さんです。こちらはあまり仕事をバリバリこなしていくようなタイプではなく、性格もちょっと気弱なタイプのお父さんです。
お子さんが発達障害児だと聞いたので、少しでも気持ちを軽くできればと思い、「悩んでいるなら、相談に乗るよ」と言ったのですが、かえって迷惑そうにされてしまいました。
世間体をとても気にしている感じだったので、ちょっと差し出がましいことをしてしまったと反省しました。ですが、このお父さんは、お子さんのことをまったくうけ入れることができていないようなので、その後どうなったかわかりませんが、ずっと気にはなっています。
お父さんは、発達障害児の子育てに気後れしている

私がいた会社内だけでも、発達障害児を抱えるお父さんは結構いました。私自身としては、子どものために他のお父さんたちはどうしているのか、参考にしたいと思い情報収集をもっとしたかったのですが、残念ながら、ほとんどは上記のような対応だったので、あまり参考になるような情報を得ることはできませんでした。
特に前者のお父さんのように、仕事の能力が高く問題解決能力も高いお父さんも少なくなかったのですが、意外と発達障害のお子さんの子育てやトラブル対応などで気後れしているお父さんが多いのには、驚かされました。それだけ、発達障害児の子育ては、お父さんにとっても、とてもハードルが高いのかもしれないと再認識させられたのです。
お父さんは困難を乗り越えてきている

ですが、多くのお父さんのこれまでの人生は、さまざまな苦難や挫折を乗り越えて、現在に至ってきたと思います。
体育会系の部活動で苦しい練習に耐えてきたり、受験戦争のなか難関大学に合格するために、寝る間も惜しんで勉強に励んできたのかもしれません。人間関係に悩まされたり、いじめを克服してきたかもしれません。家が貧乏なため、苦学生として苦労を重ねてきたかもしれません。
会社に入社してからも、総合職として成果をあげるためにさまざまな問題を解決することで困難を乗り越えてきたと思います。
私も、上記の多くを経験しています。これらの1つでも経験していれば、それを乗り越えてきたお父さんは、基本的に人間としての強さをもっていると思います。
ですから、発達障害児の子育ても、やろうと思えばできるはずなのです。ただ、お父さんにとって、これまでやってきた苦労とはちょっと違う分野なので、面食らってしまっているところがあるとは思います。
お父さんの最初の一歩を促す役割はお母さん

既にお話ししましたが、お父さんの多くは、お母さんがひとりで苦しんでいるのを見て、後ろめたさを感じているはずです。また、発達障害児とはいえ、わが子がこのままでいいとは決して思ってはいないはずなのです。
後は、最初の一歩を踏み出す勇気が必要なだけなのです。その最初の一歩を踏み出すきっかけづくりは、お父さんのことを誰よりも知っているお母さんしかできない役割なのです。
ただし、注意しなければならないのは、お父さんは、男として、夫として、父親としてなどさまざまな立場でのプライドを持っていますから、お母さんが上から目線でいっても反感を買ってしまい、かえって状況を悪くしかねません。
ですから、ここはお母さんが、お父さんのプライドをくすぐるような言い方をするか、涙ながらに窮状を訴えて、お父さんの力を借りるしかこの困難を乗り越えられないと思います。お父さんが感じている後ろめたさに訴えるような言い方がいいのかもしれません。
いずれにしても、お父さんの性格を良く知るお母さんの訴え方にかかっているのではないかと思います。
私もそうですが、実は男は単純なものです。お父さんに対しては、感謝の気持ちを伝えつつ、うまく褒めて乗せてあげれば、お母さんの手のひらで転がせる存在なような気もします。
お父さんが一歩を踏み出せない理由

もう1つのお父さん攻略のカギは、お父さんが一歩を踏み出せない理由が何かということを理解することです。
発達障害児を抱えるお父さんが、わが子を何とかしたいという行動を躊躇させる感情は、主に①世間体の悪さ②子育てや学校対応などに対する自信のなさ③面倒だと思う気持ちです。これらは、発達障害児を抱えるお父さんならば、どんなお父さんでもほとんど変わらないと思っています。
まとめ
発達障害児の子育てにお父さんが、勇気を出して一歩を踏み出せない主な理由
- 世間体の悪さ
- 子育てや学校対応などに対する自信のなさ
- 面倒だと思う気持ち
お父さん攻略のヒント
- 最初の一歩を踏み出す勇気のきっかけをつくる
- お父さんも、わが子がこのままでいいとは決して思ってはいない
- お母さんが上から目線で文句を言うと、反感を買ってしまい、かえって状況を悪くする
- お父さんのプライドをくすぐるような言い方をする(お子さんの子育ては、問題解決能力の高いお父さんにしかできないなど)
- 涙ながらに窮状を訴えて、お父さんの力を借りる(お父さんは、後ろめたい感情をもっている)
今回はここまでです。次回はお父さんが一歩を踏み出せない理由をより深く考察していきます。お楽しみに。