発達障害児を抱えるお父さんをどう攻略する?(「世間体」という強敵に敗北した私の苦い過去)

世間悪い悪い

前回は、お父さん攻略のカギの1つとして、お父さんの心情について理解し、それを踏まえた説得方法が有効であることをお話ししました。また、もう1つのお父さん攻略のカギとして、お父さんが一歩踏み出せない理由が、主に①世間体の悪さ②子育てや学校対応に対する自信のなさ③面倒だと思う気持ちであることも、お話ししました。

今回は、その続きです。

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「世間体が悪い」という感情は、とても手ごわい

困っているお母さん

お父さんが躊躇する理由が、②または③の場合は、わりと説得がしやすい方なのではないかと思います。理由が①の場合は、意外と厄介だと思います。

人は基本的には、みんな見栄っ張りな感情をもっています。人はひとりでは生きていくことができませんから、他の人から良く思われたいという感情は、人として、それはある意味自然な感情なのかもしれません。

それが適度なものであれば、その人は、人づき合いが上手な人なのだと思います。例えば、人から悪く思われないように身だしなみに気をつけるようになりますし、相手にも気をつかうことができるので、適度な人間関係を構築できるからです。

誰でも、自分が人からどう思われているか気になるものですが、それが気になって気になって仕方がないという人もいます。それはそれで仕方がないところもありますが、わが子が発達障害であることが恥ずかしいと思う気持ちが大きいとしたら、それは問題です。

私も正直に言いますが、息子が発達障害だと判明したときに「ああ、世間体が悪いな」と素直に思った自分がいます。ですが、愛する息子ですから、すぐにその考えを否定しました。

わが子が発達障害で恥ずかしいと思う気持ちは、当然のように、誰しも一度は生じる感情だと思います。ですが、その恥ずかしいと思う感情をずっと払拭できないとしたら、それはとても不幸なことだと思います。

発達障害児の兄弟児の気持ちは…

困っている男の子

息子に1つ上の兄貴がいます。この兄貴が中学生になったとき、兄貴に息子(弟)のことをどう思うか聞いたことがあります。

息子と兄貴は同じ小学校に通っていました。校内で、ときどき弟と会うことがあったようです。そして、空気の読めない弟が、兄貴に大声で話しかけてきたことが何度もあるそうです。

そのときの情景を思い浮かべて見ました。小学生の兄貴としては、発達障害の弟がいること、そして、友だちの前で空気の読めない弟から大声で話しかけられたら、それはもう、恥ずかしいと思うことは自然の反応だったと思います。

私は、兄貴に対して、息子(弟)のことを恥ずかしいという気持ちは自然な感情なのかもしれないが、弟も家族なのだから、弟を否定することはしないでほしいと伝えました。

その後、兄貴も息子も成人を迎えましたが、今でもわりと仲の良い兄弟だと思います。兄貴は弟に対してはちょっと威張るところがありますが、基本的には面倒見の良い兄貴だと思っています。この関係がずっと続くように願っています。

舅姑との衝突

怒っているおじいちゃんとおばあちゃん

妻の両親は息子に対しては、ずっと否定的でした。否定的な理由は、世間体が悪いからでした。基本的には私が転勤族だったので、物理的な距離があったことからある程度冷静な関係が築けていましたが、ついに衝突するときがきました。息子が小学校に入学した頃です。

その頃には、私も妻も息子の発達障害を会社や友人などにも、普通にオープンにしていました。私が妻方の親戚に息子の発達障害について、普通に話したことが妻の両親の逆鱗に触れたようです。「他の人にあえて話す必要がないことをペラペラと話して、何を考えているんだ」ともいわれてしまいました。

これまで妻の両親には、何度も何度もしつこいくらいに息子の発達障害について説明してきましたが、私の努力の甲斐もなく、まったく理解を示してもらえていませんでした。

ですので、いずれ早い時期にこんなこともあろうかと予想はしていました。そのとき妻は、実の両親とのトラブルに若干動揺していましたが、ありがたいことに私に賛同してくれました。

これまで妻の実家には、年に1回くらいは訪問していました。そして、訪問する都度、妻の両親からいずれ将来は同居してほしいとずっと言われ続けていましたが、いつもは快くそれを承諾していました。

ですが今回ばかりは、このトラブルを機会に息子の障害について、妻方の親戚と妻の実家のご近所さんに、正式に紹介してほしいと妻の両親に伝えました。なぜなら、いずれ同居することになるのなら、息子も家族の一員として親戚づき合いや近所づき合いをしていくことになるからです。

ですが、妻の両親は私の申し出を拒否されたので、それ以降は残念ながら、妻の両親とは疎遠になっています。

当時、息子はまだ幼かったので、そのときのやり取りを理解できていなくて、息子が傷つくことなく、本当に良かったと思っています。ですが、妻の両親の孫よりも世間体の方が重要だと思う価値観に、私と妻は、強いショックをうけていました。しばらくの間、立ち直れないくらいの衝撃でした。とても悲しいけれど、これが現実でした。

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「世間体」と「家族」の重み

「世間体」と「家族」どちらが重い?

ここで話題を、発達障害児を抱えるお父さんが、わが子を何とかしたいという行動を躊躇させる感情が世間体の場合、厄介かもしれないという話に戻します。

息子の発達障害がわかったときに、私の頭によぎった感情、兄貴が弟を恥ずかしいと思ったときの感情、妻の両親の息子に対する感情は、すべて「世間体」という人間の感情に由来したものです。そして、「世間体」は、私が考える以上に人の感情に大きな影響を与えていることを今回学びました。

私自身、「世間体」の感情(他の人に良く思われたい)がないと言えば嘘になりますが、家族と「世間体」を天秤にかければどちらが重いのかは明白です。

それでも、息子の発達障害を半年もかかりましたが、うけ入れることができました。兄貴は、親である私と妻の影響を強くうけていますから、息子(弟)の障害をうけ入れるのに、それほど大きな抵抗はなかったと思います。

家柄などを強く気にする家系で育った方の多くは、「世間体」を重んじる傾向がより強いのかもしれないと考えています。

今は核家族が主流なので、社会全体としての傾向は、家柄とかあまり重要視されなくなってきてはいるのではないかと思いますが、大家族で育った方やおじいちゃん、おばあちゃん世代の格式ある考え方に強く影響をうけて育った場合なども、「世間体」を重んじる傾向がより強いのではないかと考えています。

ここで誤解の無いように申し上げておきますが、私は、「世間体」を重んじることがいけないというつもりはまったくありません。

そうではなくて、「世間体」を重んじるばかりに、発達障害のわが子をうけ入れることができないことが、問題だと思うのです。発達障害児を抱えるお父さんが、わが子を何とかしたいという行動を躊躇させる理由が「世間体」であるならば、それが問題なのだと申し上げたいのです。

この「世間体」については、お父さんが「他の人に良く思われたい」くらいのレベルであれば、おそらく、発達障害のわが子を否定するところまでには至らずに、お母さんの説得に応じてくれる可能性があると思います。

その理由は、この場合のお父さんの優先順位が、「世間体」を重んじる意識よりも、お母さんやわが子を含む家族を守りたいという意識の方が大きいと思われるからです。

格式を重んじる世間体

家紋みたいなイラスト

ですが、お父さんの「世間体」のレベルが、「家名や家柄に傷がつくのを強く恐れている」レベルの場合は、とても厄介であると思います。この場合、お母さんやわが子を含む家族を守りたいという意識よりも、「世間体」の方を重んじる意識の方が大きいかもしれないからです。

この場合は、お母さんがしつこくお父さんを説得すると、夫婦関係が悪化してしまう可能性がありますので、特に注意が必要です。このレベルであるとお父さんの説得はむずかしいかもしれません。

お父さんを説得するのがとても困難な場合には、お父さんの親戚関係も発達障害のわが子のことを理解してもらったり、協力してもらうことはむずかしいと思います。ですので、お母さん自身のご両親やご兄弟などの近い親戚に、理解してもらい協力を仰ぐようにしましょう。

発達障害のお子さんを抱える夫婦は、お子さんの子育てなどに対する考え方が相違している場合には、夫婦関係に大きな亀裂を生じてしまうケースも少なくないと思います。悲しいことですが、考え方の違う夫婦に育てられるよりも、よりわが子のことを理解している方の親御さんに育ててもらう方が、お子さんにとってもいいことなのかもしれません。

ですが、こればかりは、私にはうまく判断ができません。最終的には、ご夫婦のご決断なのだと思います。

子育てで最も重要なことは、夫婦で協力し合うこと!!

仲良し夫婦

逆に、発達障害のお子さんを抱える夫婦でも、お子さんの子育てなどに対する考え方が一致している場合には、協力して発達障害のわが子の子育てという困難を協力して乗り越えることで、夫婦の絆は以前よりも強固なものになるだろうと思います。

私としては、できれば夫婦で一緒に、協力し合ってわが子の子育てをすることが理想だと考えます。お子さんの大きな成長を促すことができるのは、夫婦の協力があってこそだと思いますし、それこそが、お子さんの幸せな将来生活への近道だと思うからです。

まとめ

発達障害児の子育てにお父さんが、勇気を出して一歩を踏み出せない主な理由

  • 世間体の悪さ
  • 子育てや学校対応などに対する自信のなさ
  • 面倒だと思う気持ち

お父さんがお子さんの子育て参加に躊躇する理由が、(2)または(3)の場合は、わりと説得がしやすい。理由が(1)の場合は、意外とむずかしい場合がある

意外と強敵な「世間体」

  • お父さんの「世間体」を重んじるレベルが、「家名や家柄に傷がつくのを強く恐れている」レベルの場合は、説得するのはとても困難(お父さん、お母さんのご両親を含む親戚全体として、「世間体」を重んじるレベルが高い場合も、理解をしてもらうのは非常に困難)

意外と強敵な「世間体」

  • 夫婦で一緒に、協力し合ってわが子の子育てをすることが理想
  • 夫婦でも、お子さんの子育てなどに対する考え方が一致している場合には、協力して発達障害のわが子の子育てという困難を協力して乗り越えることで、夫婦の絆は以前よりも強固なものになる
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