発達障害者の成年後見制度 メリットと注意事項を確認しよう

前回、成年後見制度の概要について、簡単に説明いたしました。
今回はその続きです。
成年後見制度を検討する理由

お子さんが未成年の場合、親権者の同意なくお子さんが高価な物品を不当に買わされたり、不当な契約を結ばされたりしたときには、親権者である親御さんがそれを取り消すことができます。
お子さんが未成年であれば、発達障害者でも健常者でもそれは同じです。
しかし、お子さんが成人後はそれがむずかしくなります。
なぜなら、お子さんが成人した場合には、法律的には自動的に知的な遅れがあろうとなかろうと、お子さんが一般の成人として法律行為(契約の締結など)ができるものとして取り扱われるからです。

健常者でも、高価な物品を不当に買わされたり、不当な契約を結ばされたりしたときに、「詐欺」「脅迫」「錯誤」などが認められた場合には、契約の取り消しが認められることもありますが、あくまでもケースバイケースです。
ですから、お子さんが、発達障害者で知的遅れがあり、判断能力が不十分と判断される場合には「成年後見制度」を適用するかどうかの決断が必要となってきます。
息子の場合は、息子が高校生くらいのときに「成年後見制度」の要否を検討しました。
検討するにあたって、「成年後見制度」について簡単に調べてみました。
そして、おおよその概要については、前回ご説明したとおりです。
成年後見制度のメリット・デメリット

「成年後見制度」のメリットは、高価な物品を不当に買わされたり、不当な契約を結ばされたりした際に、簡単に不利な契約の取り消しができるところにあります。
デメリットについては、この制度ができた当時は、まだ選挙権が一部制限されることなどがありましたが、平成25年に法改正がありこの選挙権の制限のデメリットについては、解消されています。
さらに、印鑑登録ができない、株式会社の取締役、監査役になれない、弁護士や医師などの職業につけないなどのデメリットもありましたが、これらも令和元年に法改正があり、解消されています。
印鑑の登録資格の見直しについては、各自治体のHPで確認できます。
また、成年被後見人等の欠格条項(資格・職種・業務等から排除される条件を定める規定)の見直しについては、こちらでわかりやすく解説されています。
「成年後見制度」を利用する上での注意点

前回、法定後見開始の審判の申立てにかかる主な費用についてご紹介しましたが、他にも注意したい事柄があります。
後見等事務の報告

家庭裁判所は、必要に応じて成年後見人等に後見等事務の状況の報告を求めており、この報告により、成年後見人等が適切に事務を行っているか確認します。
現在、成年後見人等は、一般的には1年に1回、(後見監督人等が選任されている場合には求めに応じて)決められた時期に後見等事務の状況を報告するよう求められています。
仮に家族が後見人になった場合にも、この報告を行わなけれなりません。
成年後見人等の報酬について

成年後見人等や後見監督人等は、家庭裁判所に報酬付与の申立てを行った場合には、家庭裁判所の決定した報酬をご本人の財産から受け取ることができます。
(家庭裁判所の許可なくご本人の財産から報酬を受け取ることはできません。)
※任意後見監督人についても、家庭裁判所に対して報酬付与の申立てを行った場合には、家庭裁判所の判断により、ご本人の財産から報酬が支払われることになります。
弁護士や司法書士などの専門家に財産管理を任せれば安心ではありますが、報酬を払い続けた場合どれくらいの費用がかかるのか、確認する必要があると思います。
一度制度の利用を開始すると途中でやめることができない

成年後見制度の利用を考える際に注意しなければならないのが、一度制度の利用を開始すると途中でやめることができないということです。
法務省のホームページによると
成年後見制度は判断能力が不十分な本人の権利を保護するための制度ですので,本人の判断能力が回復したと認められる場合でない限り,制度の利用を途中でやめることはできません。
成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A | 法務省
つまり、被後見人が亡くなるまで後見が続くことになります。
上記のように、成年後見制度は、判断能力の不十分な方々を保護できるメリットがある反面、手続きにかかる手間や費用の負担、専門家に任せた場合の報酬の負担などもあります。
事前にしっかり情報収集をして、判断していくことが大切だと思います。
ご参考
成年後見制度について、わかりやすく紹介しているサイトをご紹介します。
こちらは、動画での説明や、本人向けのコンテンツも用意されていて、初めて成年後見制度について調べる方には、最適だと思います。
こちらは、具体的な内容、手続きや費用など、詳細を確認できます。
まとめ
お子さんが高価な物品を不当に買わされたり、不当な契約を結ばされたりしたとき
- お子さんが未成年の場合
- 親御さんが親権者として、それを取り消すことができる
- お子さんが成年の場合
- 「詐欺」「脅迫」「錯誤」などが認められた場合には、契約の取り消しが認められることもあるが、あくまでもケースバイケース。認められないことも少なくない
- したがって、成年後見制度の検討が必要
成年後見制度のメリットとデメリット
- メリットについて
- 判断能力の不十分な方々を保護できる
- デメリットについて
- 以前は、印鑑登録ができない、株式会社の取締役、監査役になれない、弁護士や医師、公務員、警備員など多くの職業につけないなどがあったが、法改正があり、見直されている
「成年後見制度」を利用する上での注意点
- 一般的には1年に1回、決められた時期に後見等事務の状況を報告しなければならない
- 家族が後見人になった場合、この報告を行わなけれならない
- 成年後見人等の報酬について
- 専門家に財産管理を任せた場合、報酬を払い続けなければならない
- 一度制度の利用を開始すると途中でやめることができない
- 被後見人が亡くなるまで後見が続くことになる
今回はここまでです、次回「息子と成年後見人制度」について、ご説明します。お楽しみに。