発達障害のお子さんの不登校、保健室登校の危機! 一番大切なのはお子さんの未来

前回は、普通学級は発達障害児にはとても過酷な環境であり、親御さんが気づかないうちにお子さんがトラブルを生じさせていたり、トラブルに巻き込まれていたりすること、その結果、お子さんに二次障害が生じるリスクがあることをお話ししました。
普通学級は過酷な環境ですから、大事なお子さんを守るための自衛手段を取ることが必要なことも、お話ししました。
ですが、どんなに自衛手段を講じたとしても、トラブルは残念ながら生じてしまうものです。
そして、お子さんから「もう、学校にいきたくない」といわれたとき、どう対応したらいいかについて、いっしょに考えていきましょう。
お子さんから「もう、学校にいきたくない」といわれたら…

「もう、学校にいきたくない」というお子さんへの対応は重要です。
まずは,「もう、学校にいきたくない」という理由を、お子さんに確認する必要があるでしょう。
その理由が例えば、いじめだった場合、いじめを解決してあげなければ、お子さんは安心して登校することができません。
ですから、まずは、担任の先生に相談されるかと思います。
このいじめの問題が、担任の先生に相談してすぐに解決できるようなものであれば、何ら問題はありません。
しかし、いじめの加害者がいじめを認めなかったり、いじめの加害者の保護者も巻き込んで深刻な状況に陥ってしまうこともあります。
担任の先生から「お子さんの勘違いなのでは?」などといじめの存在を否定されたりすると、いじめの問題は深刻化します。
深刻ないじめでは、その解決にとても時間がかかったり、解決自体がとても困難な状況に陥ってしまうことも、少なくはないでしょう。
そのような状況のなかでは、親御さんの対応や決断はとても重要になってきます。お子さんの将来にも大きく影響を及ぼす可能性が高いものですから、慎重な対応が求められます。
この場合の親御さんとしての対応としては、無理にでも子どもを学校に行かせたいと考える親御さんと、無理に学校へは行く必要がないと考える親御さんと判断が別れると思います。
ここで私の考えを申し上げると、しばらくの間、お子さんは学校を休ませた方が良いと考えます。
ただし、お子さんを休ませていいタイムリミットはあります。できれば1週間、長くても2週間くらいまでです。
学校へは、休む理由を明確に伝えておいた方が良いと思います。(例えば、いじめが原因で学校を欠席する場合、欠席理由は「いじめが原因で、本人が学校に行くことを怖がっているため」など)
タイムリミットの1週間ないし2週間の間は、お子さんの心のケアとお子さんの今後の学校生活として最適な居場所を考えてあげる時間です。
「もう、学校にいきたくない」というお子さんに、今の状況が変わらないまま元のクラスへ登校させることは反対です。
今の状況にお子さんは、相当苦しんでいますから、無理にそのようなことをすれば、二次障害が発症してしまう恐れがあるからです。
学校でのトラブルを抱えて無理な登校を続けて学齢期を終え、二次障害で成人後も苦しんでいるケースを複数知っていますので、そのような事態は避けたいと考えます。
そこで、今後の対応としてお子さんに取りうる選択肢を考えてみたいと思います。
- 今後の対応:お子さんの取りうる選択肢について
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- 現状のまま、これまでのクラスに在籍する
- 他の学校(普通学級)に転校
- 特別支援学級または特別支援学校へ転校・転籍
(1) 現状のまま、これまでのクラスに在籍する を選択する場合
お子さんが抱える問題をある程度はクリアできていること、または早期にある程度の解決が見込める状況であることが最低条件となります。
でなければ、上記のとおり、トラブルがもっと深刻になってお子さんの二次障害の発症の可能性が高くなるからです。
ですから、お子さんをこれまでのクラスに現状のまま在籍させる場合、トラブルを根本から解決しておく必要があります。
(2) 他の学校(普通学級)に転校 を選択する場合
今発生しているトラブルの原因が、お子さんでないことが必要です。
例えば、授業についていけない、お子さんの不用意な発言でクラスメートとトラブルになるようなケースでは、他の学校に転校したとしても、お子さんにかかる問題の根本的なところが解決されていません。
ですから、転校先でも同様の問題が起きる可能性があります。
(3) 特別支援学級または特別支援学校へ転校・転籍 を選択する場合
特別支援学級または特別支援学校の担任の先生は、普通学級の先生と比較して管理する生徒数が少ないことから、お子さんにとって安心できる環境を整えてもらえる可能性が高いと思います。
後述しますが、お子さんの最終目標である将来の幸せな生活を実現するのにも十分な環境だと思いますので、この選択をおすすめします。
学校を長期で休むことに本当に慣れてしまう前に

お子さんが学校を休む期間のタイムリミットを設ける理由は、これ以上学校を休むと学校に復帰するのがむずかしくなるからです。
お子さんも学校を休んでいる当初は、学校が気になる反面、徐々に学校を休んでいることに慣れてきます。
学校を長期で休むことに本当に慣れてしまうと、もう学校に行くことが嫌になってしまいます。
元々、学校でのトラブルが原因で、学校に行けなくなってしまったのですから、その後も、苦しい思いをしてまで学校に行くことに、疑問を持つようになってしまうことになります。
不登校が長期化してしまうと、今度は逆に将来のことが気になりだしますが、簡単には学校には行けなくなってしまうのです。
そして、不登校がひきこもりへと悪化することになってしまいます。
なお、不登校ではなく、保健室登校を選択される方もいますが、これもあまりおすすめできません。
なぜなら、保健室登校にお子さんが安心して慣れてしまうと、教室へ戻るタイミングを逸してしまう恐れがあるからです。
また、保健室登校になったということは、お子さんが教室にいけなくなった原因がきちんと解決されていないからだと思います。ですから、その原因を解決しない限りお子さんは教室に戻ることができません。
保健室登校中の時間の使い方も問題です。数か月も無為な時間を費やしてしまうことに問題を感じています。
一番大切なのはお子さんの未来

お子さんの最終的な目標は、将来の幸せな生活の実現です。
将来の生活費の裏づけは就労によって得られる賃金ですから、就労の実現が不可欠です。
そして、その就労を実現するためには、就労するための最低条件(※)をクリアしていく必要があります。
最低条件をクリアしていたとしても、必ずしも就労が実現できるわけではありませんが、就労の実現に向けてぐっと可能性が高くなります。
就労を実現のための最低条件のクリアは、結構ハードルが高いと思いますが、学齢期の長い期間を有効に使えば十分可能だと考えています。
ですが、学齢期は長いといっても時間は有限ですから、その時間をできる限り有効に使いたいものです。できれば、就労を実現するために、お子さんのスキルアップに使いたいからです。
普通学級でうまくやっていくためには多少の無理は必要です。
就労のスキルを習得するにも多少の無理は必要です。
しかし、お子さんの二次障害が心配されるような無理な生活をしている将来に、明るい未来は想像しにくいものです。
ですから、お子さんにとって過剰な無理をする必要のない環境を選択していただきたいのです。
そして、時間を有効に使って、お子さんの明るい未来を実現できるようにフォローしてあげることをおすすめします。
なお、将来の幸せな生活の実現、就労の実現へのプロセスについては、こちらをご参照ください。
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- 発達障害児の幸せの第1歩は、就労の実現と就労の継続から発達障害のお子さんにとっての幸せとは? 衣食住が足りていて、余暇も充実していて、仕事も順調でやりがいもあるとしたら、もうほぼ幸せといっても差し支えないような気がします。
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- 発達障害者の就労への道は険しい発達障害のお子さんの年齢が小さいほど、将来への不安が大きいのではないでしょうか。まずは、発達障害者の就労の現実をご理解いただき、堅実な未来と幸せを一緒に考えてみましょう。
ご参考
- 就労を実現するための最低条件
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- 最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力、簡単な判断能力)
- 就労スキル(清掃の仕事の場合は、清掃に関するスキル)
- ある程度の体力
- 最低限のコミュニケーション能力
- 協調性
お子さんから「もう、学校にいきたくない」といわれたら…
<今後の対応:お子さんの取りうる選択肢について>
- 現状のまま、これまでのクラスに在籍する
- 他の学校(普通学級)に転校
- 特別支援学級または特別支援学校へ転校・転籍
- しばらくの間(せいぜい1~2週間程度)、お子さんは学校を休ませ、お子さんにとって最も良い選択を考える
長期の不登校、保健室登校はおすすめできない
- 「ひきこもり」「不登校」にならないよう十分配慮する
最終的な目標は将来の幸せな生活
- 将来の生活費の裏づけは、就労で得られる賃金
- 就労の実現が不可欠
- 就労を実現するための最低条件のクリア