発達障害児に対するいじめ対策 いじめ問題が深刻化したときに、親として取るべき選択は? ②

前回は、発達障害児に対するいじめが発生した場合、なかなか解決できずに問題がこじれてしまうことがあること、その際、親として取るべき解決策への行動について、お話ししました。
具体的には、いじめが深刻化した場合に優先すべきことは、いじめの解決よりもお子さんのメンタル面のケアです。
また、親としてどのような対応をすべきかについては、いじめの発生原因を確認したうえで、発生原因に即した対応が求められます。
前回、発達障害児にまったく非がないいじめに関するいじめの対応について、お話ししました。今回は、発達障害児にいじめの原因がある場合について、考えていきましょう。
普通学級では、発達障害児が原因となるいじめも
- 発達障害児に対するいじめは2種類(原因別に分類)
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- 発達障害児を原因としないいじめ
- 発達障害児を原因とするいじめ
(2) 発達障害児を原因とするいじめ
前々回で、いじめは普通学級で発生しやすい傾向があるとお話ししました。発達障害児が、いじめの原因になっているか否かにかかわらず、その傾向も変わりません。
普通学級において、発達障害児自身がいじめの原因というか契機になることは、意外に思われる方もいるかもしれませんが、わりと良くあることなのです。
具体例として、いくつかわかりやすい事例を挙げてみましょう。
前にもお話ししましたが、よくあるケースは発達障害児が周囲の空気を読むことができずに、不用意な発言をしてしまうことにあります。
当然、相手は怒りますから険悪な雰囲気になります。

そこで、発達障害児が険悪な雰囲気に気づくことができれば良いのですが、できなければ、トラブルが発生することになります。
それが、いじめに発展することも十分予想されることです。
他の事例では、発達障害児による授業妨害もわりとよく耳にします。
授業に集中できない子どももいます。他のことに気を取られて授業に集中できずに、教室内を徘徊したり、教室から勝手に飛び出したりすることもあります。

授業内容を理解できない場合に、上記のことが起きやすくなります。授業内容を理解できない場合、ただ席についているだけの状態です。
ただ黙って、長時間自分の席に座っているだけの状態は、とても苦痛なことです。そのうちに、授業にあきて教室内を徘徊してしまうかもしれません。
結果的に授業妨害をしてしまうことも、発達障害児では良くあることなのです。
ですが、担任の先生やしっかりと授業をうけたいと思っているクラスメートたちの立場に立てば、授業妨害は決して許されるものではありません。
先生やクラスメートの保護者から、発達障害児の保護者に苦情がいくかもしれません。
それでも、授業妨害が改善されない場合には、いじめを含めた大きなトラブルに発展する可能性も十分考えられることです。
普通学級では、その他にも発達障害児にとっては、レベルの高い行動が求められます。
体育の授業では、休み時間のうちに体操着に着替えて校庭や体育館に集合する必要があります。
音楽では、音楽室への移動があります。班ごとに給食当番や掃除当番もあります。他にも、イベント時の団体行動などもあります。
これらを、そつなくこなしていく能力が求められるのです。それがうまくできない場合は、トラブルになったりいじめに発展することもあります。
ただ、ここでも申しあげておきますが、原因が発達障害児にあったとしても、だからいじめをしてもいいという理由にはなりません。

いじめをした方が全面的に悪いということは、誤解の無いようにしておきます。いじめは、絶対的に悪いことなのです。
いじめの発生原因によって、その対応方法が違います②
発達障害児にいじめの原因がある場合は、その解決は結構むずかしいといえます。
親御さんが取れる選択肢は、以下のとおり、3つほどあるかと思います。
- 発達障害児に原因があるいじめ対策 親御さんが取れる選択肢
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- そのまま今の学校に通学させる(茨の道の選択)
- 転校(他校の普通学級、これも茨の道の選択)
- 転校・転籍(特別支援学級、特別支援学校)
以前にご紹介した「発達障害児を原因としないいじめ」とは、事情がまったく異なります。
なぜなら、今回のケースはいじめの原因やきっかけが発達障害児にあるのですから、状況によっては、担任の先生、クラスメートおよびその保護者から非難の的になってしまう可能性があるからです。
また、そのことを親御さんが十分認識していないと、さらなる不幸な状況を招く恐れがあるということです。
いじめの原因やきっかけが発達障害児側にあるということは、前述したように発達障害児が不用意な発言をして、クラスメートを怒らせてしまったり、授業妨害をしてしまうなどの問題があるということです。
ですから、現状のままではうまくいかないのは、ご理解いただけたと思います。
(1) そのまま今の学校に通学させる(茨の道の選択)

この状況でうまくやっていくためには、根本的な原因をクリアできないとむずかしいと思います。
具体的には、発達障害児の問題行動を改善していくことが必要になります。
ですが、不用意な発言をすることや授業妨害をすぐには改善がむずかしいですから、徐々に改善していくことになります。
ですが、ある程度改善できるまでは、担任の先生、他のクラスメートやその保護者の理解を得る必要がありますから、かなりハードルの高い作業です。

いじめをした方が全面的に悪いのですが、親御さんがそのことを全面に出して、一方的に相手を責め立てると相手に強く反発されることが予想されますので、うまく話をすすめていくことが求められます。
このケースでは、発達障害のお子さんの改善がむずかしい場合や、担任の先生、他のクラスメートやその保護者の理解を得ることができない場合には、やはりお子さんの環境を変えるしか方法はありません。
このままでは、いじめの解決はむずかしいからです。その場合、無理にお子さんを学校に登校させると、二次障害を発生させる恐れがあります。
また、不登校になってしまうと別の問題が生じます。
ですから、この場合、親御さんが取る最適な選択肢は、特別支援学級または特別支援学校への転校・転籍だと思います。
少なくとも、発達障害のお子さんを原因として普通学級でトラブルが生じる場合、残念ながらお子さんは、普通学級に在籍できるだけのレベルに達していなかったということになります。
親御さんのお気持ちとしては、ここまで頑張ったのに普通学級をあきらめきれないという感情があるかもしれません。
ですが、お子さんにとって最適な環境を提供してあげることが、お子さんの成長を促せることにつながるのです。
無理な学校生活の先に幸せな将来生活は、想像できないものです。
(2) 転校(他校の普通学級、これも茨の道の選択)

この選択肢も、「(1)そのまま今の学校に通学させる(茨の道の選択)」と同様に、あまりおすすめはできません。
なぜなら、根本的な解決ができていないとすれば、新しい環境でもまた、同じようなトラブルが生じる可能性が非常に高いからです。
(3) 転校・転籍(特別支援学級、特別支援学校)

いじめの発生原因が発達障害のお子さんにある場合、この選択が最適と思います。
親御さんとしては、普通学級の在籍にこだわる方がいらっしゃるかもしれませんが、お子さんに大きな無理をさせる環境が、本当にお子さんのためになるかといえば、マイナス要因しか考えられないからです。
それよりは、お子さんに無理のない環境で、お子さんに合った成長を促せる環境の方が良いと考えます。
また、お子さんの最終目標は、お子さんの幸せな将来の生活です。
普通学級に在籍をすることが、本来の目的ではありません。
将来の就労を目指して、就労を実現するためのスキルも、お子さんの無理のない環境で育む方が、より大きな成長が期待できると思います。
今は苦しいかもしれませんが、最終的に重要なことは、お子さんの幸せな将来の生活の実現です。

親御さんにとって、この考え方さえブレなければきっとうまくいきます。
お子さんの幸せな将来の生活を実現するために考えるべきことについては、こちらをご参照ください。
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- このブログについて発達障害児の子育ては、言葉では言い尽くせないほど大変です。強いこだわり、超多動、中度の知的な遅れ、さまざまな問題行動のあった、発達障害の息子の子育て、学校生活や学習、一般企業に就労させた経験をお役立ていただければと思っています。
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発達障害児に対するいじめ解決が困難な状況での親ができる対応策
- いじめの発生原因がお子さんにある場合、親ができる対応は3つ
- (1) そのまま今の学校に通学させるという茨の道の選択肢。
ただし、担任の先生、他のクラスメートやその保護者の理解を得ながら、お子さん自身の問題を改善させていくことが必須。
いじめをした方が全面的に悪いが、一方的に加害者側を責め立てると相手から強く反発されることが予想されるので、うまく話をすすめていくことが求められる - (2) 転校(他校の普通学級、これも茨の道の選択)
お子さん自身の根本的な解決ができていないとすれば、新しい環境でもまた、同じようなトラブルが生じる可能性が非常に高い - 選択肢として、あまりおすすめできない
- (3) 転校・転籍(特別支援学級、特別支援学校)
お子さんに無理のない環境で、お子さんに合った成長を促せる環境。
お子さんの最終目標は、お子さんの幸せな将来の生活。
将来の就労を目指して、就労を実現するためのスキルも、お子さんの無理のない環境で育む方が、より大きな成長が期待できる - 選択肢として、おすすめ
最も重要なことは…
- お子さんの幸せな将来の生活の実現(親御さんの考えで、これさえブレなければ、きっとうまくいきます)
今回は、ここまでです。
通常のいじめは、わりと簡単に解決できる場合が多いと思いますが、いじめが深刻化するとそれだけで解決が困難になります。
いじめが深刻化する状況には、どのような要因があるのでしょうか。
次回、一緒に考えていきましょう。お楽しみに。
