発達障害児に対するいじめ対策 いじめ問題が深刻化しやすい9つの要因とその解説 ①

前回は、「発達障害児を原因とするいじめ」に対して、親御さんが取れる対応について、お話ししました。
最終的に親御さんが考えるべきことは、お子さんの将来の幸せな生活像です。
ですから、普通学級に在籍することが、最終目的ではないことに気づくことができるかどうかが重要なのです。この大事な考え方さえ、ブレなければうまくいくと思います。
いじめが発生した場合、いじめを根本から解決することが最も理想的です。
担任の先生に相談することで簡単に解決できれば良いのですが、簡単に解決できないケースもあります。
いじめの問題が簡単に解決できないケースの1つは、前回もお話ししましたが、「発達障害児を原因とするいじめ」です。
発達障害児本人がその原因となっているため、周囲の理解が得るのがむずかしいためです。
ここでも、誤解の無いように申し上げておきますが、いじめの問題では、発達障害児にその原因があったとしても、いじめの加害者が一番悪いのに決まっています。

しかし、残念ながら、心情的にいじめの加害者に同情が集まりがちなことも事実です。だから、いじめの解決がむずかしくなってしまうのです。
発達障害児の親御さんとしては、そういった事情をよく理解しておいた方が良さそうです。
いじめの問題を解決させまいとする力が働くことも…

もう1つ、いじめの問題の解決をむずかしくしている事情があります。それは、いじめの問題自体にその問題を深刻化しやすい要因があるケースです。
いじめの問題が深刻化しやすいのは、いじめの加害者側や本来なら仲介役となるべき学校側が、いじめの問題の責任追及から逃れたいといった自分勝手な感情が働いたりするからです。
そうなると、発達障害児の親御さんが、いじめを解決しようとしていくら頑張っても、それを妨害しようとする存在があるので、解決がとても困難なものになってしまいます。
そういった事情もあわせて知っておくことで、たとえいじめの解決ができなかったとしても、わが子にとって最も良い選択をすることができるのではないかと思うのです。
いじめの問題が深刻化しやすいのは、どうして?①

いじめという行為は知能犯的行為であることが多く、加害者は健常児である可能性が高いです。
またその場合、いじめの内容も陰湿的で、さらにそれを秘匿しようという意識が働くため、顕在化しにくく対応がむずかしいのも特徴です。
加害者が発達障害児の場合では、いじめの内容もストレートでわかりやすいことが多いので、対応しやすいと思います。
いじめが発生したとしても、加害者がすぐにいじめの事実を認めて真摯に謝罪するケースは、問題が小さいといえます。
また、担任の先生が、普段からいじめは絶対に許さないという姿勢でいて、その考えがクラス全体に浸透されている場合は、いじめは発生しにくいですし、仮に発生したとしても、すぐに解決が期待できると思います。
ですが、現実にはわが子へのいじめの事実がわかったとしても、加害者が健常児の場合は、解決がとてもむずかしい場合があります。
その要因となりそうなものについて、以下のとおり、まとめてみました。
その要因の特徴と対処法などについても、あわせて記載しました。ご参考になればと思います。
- いじめ解決が困難になる可能性が高いケース
-
- 物的証拠などがない
- 目撃者がいたとしても、加害者側からの報復を怖れて証言してもらえない
- いじめの期間が長期間にわたる、または、いじめによる被害が大きい
- 被害者が発達障害児の場合、証言能力がないとか低いと言われることが多い
- 加害者がいじめを否定する(プロレスごっこだった、ちょっとからかっただけなど)
- 担任の先生の問題解決能力が低い、または、いじめなどの問題から逃げたがる姿勢など
- 加害者の保護者もわが子かわいさに、いじめを否定する
- 加害者の保護者がPTA幹部、または、地元の有力者
- 上位の先生(学年主任、教頭、校長)が、いじめを肯定したがらない
【1】物的証拠などがない

いじめの問題では、いじめの加害者側がいじめをしたことを認めて真摯に謝罪する場合は、わりと解決が容易です。
いじめの解決がむずかしいのは、いじめの加害者側がいじめをしたことをなかなか認めようとしないからです。
加害者側に罪の意識があって、素直に謝罪してくることはそれほど多くは無いようにも思います。
いじめ加害者側の保護者は、仮にわが子が嘘をついていたとしても、わが子のいうことを信じたいという心理が働きます。
または、何となくわが子がいじめをしているのではないかと思っていても、わが子をかばいたいという心理も働きます。
ですから、いじめ加害者本人がいじめを認めない限り、いじめ被害者側が不利な状況ですから、いじめ解決が困難になるのです。
いじめ問題の仲介となるべき学校の先生は、「文部科学省のいじめの定義」から、いじめの被害者がいじめられたと申し出をしてきた時点で、いじめと認定してもいいと思います。
しかし、いじめ加害者側からの「証拠もないのにいじめと認定してもいいのですか」という抗議をうけると、及び腰になってしまうのはちょっと仕方がないかもしれません。
※いじめの定義(文部科学省)から抜粋
「個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、 いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする」
いじめの問題に対する施策:文部科学省
文部科学省のいじめの定義では、いじめ被害者からの申し出で、いじめとして取り扱うルールになっています。
ですが、具体的な証拠があった方が、いじめを認定しやすいという観点からも、できる限り証拠を収集しておくべきと考えます。
怠慢な先生の場合は、いじめ問題への対応はとても面倒だと考えてしまいがちです。
本当はいじめの事実を知っていたとしても、被害者側に明確な証拠がない場合、いじめはなかったとするのが一番楽ですから、なかったことにしたいと安易に考えてしまうこともあります。
ですから、被害者の立場とすれば、いじめの証拠を残しておく必要があります。
発達障害児の親御さんの立場では、被害者なのに何でそんなことまでする必要があるのかと文句の1つも言いたいところですが、これがないと解決への話し合いをしても、かなりの苦戦を強いられることになります。
酷い場合には、いじめを「でっちあげられた」などと言われかねません。ですから、できる限り証拠を残す努力をしましょう。

<残しておきたい証拠など>
物的証拠(悪口を書いたメモなど、教科書やノートなどを破かれた、落書きされたなどの現物、汚された服やくつなど)できれば、現物を残しておく。写真も撮っておく。
殴られたり、蹴られたりした場合、あざや怪我をした箇所の写真。病院にかかった場合には、必ず診断書も取っておく。
いじめの現場の録音(今は、長時間録音できる機械があるので、わが子のランドセルに仕込んでおくなど。)
日記などの記録を取っておく(わが子から聞き取りしたいじめの内容を記録。日にち、時間、場所、加害者氏名、いじめの具体的な内容「叩かれた(何回)」「お金を取られた(いくら)」など)
【2】目撃者がいたとしても、加害者側からの報復を怖れて証言してもらえない

いじめの解決に向けての話し合いでは証拠の有無がとても重要になりますが、加害者側が巧妙でなかなか収集できないこともあります。
その場合には、クラスメートなどの目撃者がいないか、さがす方法もあります。
わが子からいじめについてヒアリングをしたときに、いじめの現場に他のクラスメートがいれば、その子から目撃情報を得られる場合もあります。
ただし、加害者側からの報復を怖れて、なかなか証言をしてくれないことも十分予測できますので、あまり無理強いをしないようにしましょう。無理強いしても、あまりいいことはありません。
また、一旦は証言してくれても、その後加害者側から脅されるなどして、証言を翻してしまうこともあります。
息子のいじめの場合も、目撃者が何人か見つかったのですが、その都度加害者側の親が根回しをしたために、目撃者の証言が翻ってしまうことを何度か経験しています。
その他の方法としては、例えばクラスメートに無記名のアンケートを学校側にお願いする方法もありますが、学校側はとても嫌がるかもしれません。
まず、先生の立場からすれば、アンケートをすることはとても面倒な作業だからです。

アンケート用紙を作成し、生徒・児童からアンケートを回収して、集計のうえアンケート内容を分析する作業があります。
その後、それを被害者側、加害者側に説明し、いじめの事実の記載があれば、それに対応する必要もあります。
また、保護者説明会を開催して、広く保護者説明する必要が生じるかもしれません。
いじめの問題を面倒だと思っている先生であれば、なおさらやりたくないと拒否してくるかもしれません。
さらに、学校側や先生にとって不都合な情報が出てくる怖れもありますから、学校側としては、できればやりたくないというのが本音だと思います。
- いじめ問題の解決を難しくしているケース
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発達障害児自身がいじめの原因になっているケース
- 発達障害児本人がその原因となっているため、周囲の理解が得るのがむずかしい
いじめの問題自体に、その問題を深刻化しやすい要因があるケース
<いじめ解決が困難になる可能性が高いケース>
- 物的証拠などがない
- 目撃者がいたとしても、加害者側からの報復を怖れて証言してもらえない
- いじめの期間が長期間にわたる、または、いじめによる被害が大きい
- 被害者が発達障害児の場合、証言能力がないとか低いと言われることが多い
- 加害者がいじめを否定する(プロレスごっこだった、ちょっとからかっただけなど)
- 担任の先生の問題解決能力が低い、または、いじめなどの問題から逃げたがる姿勢など
- 加害者の保護者もわが子かわいさに、いじめを否定する
- 加害者の保護者がPTA幹部、または、地元の有力者
- 上位の先生(学年主任、教頭、校長)が、いじめを肯定したがらない
- なぜ、いじめ解決が困難になる可能性が高いのかについて
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【1】物的証拠などがない
- いじめ加害者本人がいじめを認めないことがあること。
いじめの問題の仲介となるべき学校の先生も、具体的な証拠がないとなかなかいじめを認定したくないという感情が働く
【2】目撃者がいたとしても、加害者側からの報復を怖れて証言してもらえない
- いじめの解決に向けての話し合いでは、証拠や目撃者などの有無がとても重要
- いじめ加害者本人がいじめを認めないことがあること。
今回はここまでです。次回は、いじめ問題が深刻化しやすい要因についての続きです。お楽しみに。
