発達障害児に対するいじめ対策 いじめの本質がわかると解決策が見えてくる

前回は、「いじめ対策のまとめ」をご紹介しました。
ここまでで、発達障害のお子さんがいじめにあったとき、親御さんとしてどのように対応したらいいのかについて、おおよそご理解いただけたと思います。
なお、息子も小学校時代ひどいいじめを経験しています。
発覚からいじめを完全に解決するまでには、数年を要しました。
私が息子のいじめを解決するまでの長い道のりについて、以下の「いじめ解決奮戦記」にて、お話させていただいております。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
最も重要なことは何かをしっかりと把握しよう。そして、ブレずに行こう

現実にお子さんのいじめが発生してトラブルの当事者となると、なかなか思うようにいかないこともあろうかと思います。
トラブルの当事者になると、パニックになってしまい、頭が真っ白になってしまうこともあります。
事前にいろいろと準備していたとしても、その半分も実行できないこともあります。
このような状態で「冷静になれ」と言われても、なかなかむずかしいものですが、やはりこのようなときこそ冷静にならないとうまくいかないものです。
あなたひとりで対応しなければいけないと考えれば、プレッシャーがかかって冷静になれないかもしれませんが、別にひとりで対応しなければいけないというルールはありません。
いじめの解決が困難なケースでは、夫婦で対応するのもありですし、親戚縁者、親しい友人を巻き込んでもいいかと思います。

あなたの周囲に頼りになる人がいれば、心強いと思います。
いじめの内容が暴力的な内容であれば警察を頼るのも、1つの方法です。
お金に余裕があれば、興信所や弁護士などに依頼した方が良いのかもしれません。
また、いじめの問題に関しては、無理に解決しなくてもいいとも考えています。
以前にもお話ししましたが、「逃げるが勝ち」という言葉があるように、いじめの解決が困難なケースでは、いじめの解決よりもお子さんの心のケアを優先すべきです。

他校への転校や特別支援学級、または特別支援学校への転校・転籍も視野に入れたうえで、問題解決を図ることも重要です。

いずれにしても最も重要なことは、お子さんにとっての最終目標は「将来の幸せな生活」の実現です。
この考え方さえブレなければ、きっとうまくいくと思います。
いじめの本質とは?

学校内で発生するいじめの原因はさまざまですが、一部の児童・生徒がいじめをするのは、いじめをすることが許される土壌があるからです。
いじめが発生する学校には、いじめをしても「バレなければ大丈夫」とか、「バレても大したことはない」と、いじめ加害者に思わせる環境があるからです。
多くの先生は、「いじめ」に対してどう考えているでしょうか。
多くの先生の本音は「自分のクラスで、いじめは起きてほしくない」「だけどいじめ対応は、大変だからしたくない」「特に面倒な保護者だと、対応がとても面倒で憂鬱」といったところでしょうか。

実際はそうではないと思いたいところですが、いじめがどこの学校でも発生している以上、先生の心のなかに少なからず、そういったマイナスの感情がまったくないとは言い切れないと思います。
先生のこういった感情は、何となく学校内に充満しています。
このような雰囲気は、具体的には、先生の態度や言葉の端々にちりばめられています。
そして、いじめ加害者は、「だから、先生は面倒な対応はしたがらないだろう」「いじめをしても証拠さえ残さなければ、先生は見て見ぬふりをしてくれるだろう」と、何となく理解しています。
「だから、いじめもやり過ぎなければ大丈夫」といった雰囲気が、学校内にあるのです。
しかし、いじめはエスカレートするものです。
最初は単純なからかい程度だったものが、深刻ないじめに発展することはよくあることです。

しかも、実際にいじめが発生しても、いじめ加害者としては「先生から何も指摘されなかった」「いじめ被害者側の勘違いとして処理された」などの体験が、いじめの成功体験として蓄積されます。
この悪い成功体験のさらなる蓄積により、いじめ加害者になかには「いくらいじめをしても問題ない」といった奇妙な自信が生まれます。
逆にいじめ被害者側はどうでしょうか。
勇気を出して担任の先生にいじめを訴えた結果、「いじめ加害者から、チクったとさらにいじめが酷くなった」、先生から「(いじめ被害者の)勘違いじゃないの」と言われた。
または、「(いじめ被害者の方に)問題があるから、いじめられるんじゃないの」と逆に説教されたりすることもあるでしょう。
このような負の体験をしたいじめ被害者は、「先生のことは信用できない。もう、先生には二度と相談しない」「誰も自分を助けてくれる人はいない」と、絶望してしまうに違いありません。
このような状況では、いじめがなくなるわけがありません。
いじめの問題は、いじめ加害者が悪いに決まっています。
しかし、いじめの本質的な問題は、このようないじめが起きやすい土壌を、先生をはじめとした大人たちが作り出していることなのです。
いじめの解決・いじめ防止は実は簡単!?

実は、学校内で発生するいじめの問題を解決・防止するのは、そんなにむずかしいことではないのです。
意外かと思われるかもしれませんが、実は理屈は単純なのです。
もしも、学校の先生が学校全体として一丸となって、「いじめは絶対に許さない」という雰囲気を学校全体で醸し出していれば、いじめは起こりえません。
すべての先生が朝礼やホームルームなどのさまざまな機会に、「いじめは絶対に許さない」という姿勢(言動だけではなく態度でも示すことで)を児童・生徒に伝えていれば、いじめ加害者は「いじめをしたらまずいことになる」と意識しますので、いじめは起こりにくくなります。

また、児童・生徒全体にも学校全体としての熱意が伝わり、「いじめはいけないことだ」「いじめが起きないようにみんなで協力し合おう」という雰囲気が醸造されていきます。
そうした雰囲気は、児童・生徒たち全体の意識をも変えていきます。
しかしながら、このような雰囲気が学校内で醸造されている学校は、まだまだ少数だと考えています。
ですから、学校内でのいじめの問題がなくならないのです。
そして、痛ましいいじめに関する報道も、なくならないのだと思います。
いじめはいつでもどこでも、大人の世界でもいじめは起こるもの

いじめの問題は、学校だけで起こる問題ではありません。
どこでも起こりうる問題なのです。
いじめは、子ども同士の間だけでの問題ではないのです。
大人同士の間でも、いじめの問題はあります。
しかも、大人ですから、いじめの内容も子ども同士のいじめよりも陰湿ですし、狡猾な内容でもあります。
大人のいじめでは、ママ友同士でも発生しますし、学校内での先生同士の間でも起こり得ます。
本来ならば、子どもたちのためにより良い教育を目指すべき、PTA内でも起こるのです。
一般企業の大人の職場でも発生しうる問題です。
もっと言えば、発達障害児の親御さん同士でも起こり得ます。
一般企業において、セクハラ、パワハラなどと言われるものは、元々社内で発生するいじめです。

社内で発生するいじめの種類を、細かく分類化したものです。
会社では、上司と部下といった力関係を背景にしたものなど、さまざまないじめが存在します。
被害者側は、会社を辞めようかと思うくらい悩んでいるのに、加害者側はいじめをした自覚が薄いケースがほとんどです。
ですから、加害者側にしっかりと自らの行為を自覚させるために、いじめの種類ごとにセクハラ、パワハラと分類化したうえで、それぞれにわかりやすい事例を示して、社内いじめが発生しないように啓もう活動をしているのです。
最近では、社内のコンプライアンス(法令遵守)意識が高くなってきていますが、今でも大企業でも、そういった事例が後を絶たない状況なのです。
時折、新聞報道などされていますので、みなさんも十分にご存知のとおりかと思います。
精神的に成熟していると思われる大人同士でもいじめが発生するのですから、より未熟な子ども同士のいじめが発生しても、何ら不思議はないのです。
なぜいじめが起こるのでしょうか? また、いじめは無くならないのでしょうか?

仏教的にいうと、人間には108の煩悩があると言われています。
私自身、自分のことを思い返してみると、「煩悩だらけだなぁ」と我ながら恥ずかしく思ったりします。
年齢もそれなりに重ねてきて少しは成長できたかなと思うことは、自分に煩悩があることを素直に認めることが、できるようになったことくらいです。
若い頃は、周囲に良い人だと思われたくて、多少無理をしていたような気もします。
今では自分の煩悩に向き合いながら(自分のダメさ加減を認めつつ)、他者ともうまくやっていければいいなと思えるようになってきています。
私だけではなく、人は誰でも煩悩をもっています。
煩悩があるから理想の自分と違う場合、ダメだと思ったり、自分よりできる人を見ると羨ましいと感じたり妬んだり、嫉みの感情を抱いたり、僻んだりしたりします。
会社の同期が自分より早く出世すれば、表面的には「おめでとう」と言いますが、内心では何とも言えない感情が渦巻いていたりします。
「俺の方が、仕事ができるのに、どうして…」と、自分の力不足を棚に上げて愚痴を吐いたりもしました。

しかし、それが人として正直な感情なのだと思います。
私も年を重ねてそういった自分の嫌な部分を、素直に認められるようになってきたと思います。
若い頃は、「俺の実力をわからない上司の方が無能なんだ」なんてことを考えていたことは、今では恥ずかしい思い出です。
個人差はあると思いますが、多くの方は私と同じような人生を歩んできたと思います。
人の感情に妬み、嫉み、僻みなどのマイナスの感情がある限り、いじめというものは無くならないのだと思います。
世の中には、さまざまな争い事があります。
みんながいつも優しい気持ちでいられれば、そんなことはないのでしょうけれど、振り返って私自身も偉そうにいえる立場にありません。
簡単には解決できない、なかなかむずかしい問題です。
いじめの原因には、他にも相手の気持ちがわからなかったりして、意図せずに他者に対して、いじめととられるような行動をしてしまうことがあります。
また、元々他者を見下してしまう人もいます。

どちらにしても、他者とうまくやっていきたいという感情「協調性(他者との適切な関係を築きたいという謙虚な心)」が欠如していることが、大きな原因であると考えます。
私は、息子たちには「協調性」を十分に育んできたつもりですが、私自身がどうだったかはあまり自信がありません。
みなさんはどうでしょうか。私は、今後の人生では、他者とは穏やかにうまくやっていければいいなと考えています。

まとめ
いじめ解決に向けて、もっとも重要なこと
- 冷静になること
- お子さんの最終目的(将来の幸せな生活)を見失わないこと
いじめの本質とは?
- 学校内でいじめが発生するのは、いじめが発生しやすい土壌があること
いじめの根本的な解決法、再発防止とは?
- 学校の先生が学校全体として一丸となって、「いじめは絶対に許さない」という雰囲気を学校全体で醸し出すこと
- 先生が「いじめは絶対に許さない」という姿勢(言動だけではなく態度でも示すことで)を児童・生徒に伝えることで、いじめ加害者は「いじめをしたらまずいことになる」と意識するので、いじめは起こりにくくなる
いじめはいつでもどこでも、大人の世界でも起こり得る
- 精神的に成熟している大人同士でもいじめが発生する。より未熟な子ども同士であれば、いじめが発生しても何ら不思議はない
