「人に愛されるには…」は、発達障害児の子育てにも大きなヒント

前回、大人になって子育てを経験してからみたペリーヌ物語で、ペリーヌには、不思議な魅力があることに気づいたとお話しました。今回は、その続きです。
ペリーヌの不思議な魅力は、出会った人を自分の良き理解者に変えてしまう力があることです。以前は、幾多の困難を前向きでひたむきな性格で乗り越える姿に、周囲の人々の心を動かしたのだろうと思っていました。もちろん、この考えは間違ってはいないと思いますが、私自身の息子を育てた経験から、ペリーヌの不思議な魅力は、それだけではないのではないかと気づいたのです。
そのヒントは、ペリーヌの母であるマリの存在にあると考えたのです。マリはペリーヌを早く祖父の元へ届けようと無理な旅をしますが、パリに到着したところでとうとう病に倒れます。自分の寿命が残り少ないことを悟ったマリは、ペリーヌを枕元に呼び最後の言葉を伝えます。
「母はあなたを素直で正直な子どもに育てたつもりよ。それはみんなに愛される子どもになってほしいから。おじいさんは、最初はあなたに対して冷たくあたるかもしれないけれど、あなたのことを理解したらきっと好きになってくれると思うの。」
そして、息を引き取る間際には「人に愛されるにはまず、自分が人を愛さなければ…。」との最後の言葉を残しています。
この母の子育ては、まさに協調性を重視した子育てです。その最たるものが、「人に愛されるには…。」の言葉です。人間関係とは不思議なもので、自分が嫌っている相手とは不思議と仲良くなれませんし、仲良くしたいと考えている人とは、不思議と仲良くなれる可能性が高いと思います。その理由は、嫌っている相手に対しては、自分が普通に接しているつもりでも、何となく嫌っている気持ちが相手に伝わるからだと思います。それは、言葉の端々にだったり表情に何気に現れて、嫌いだという感情のオーラを発してしまうものだと考えています。それは、逆も然りです。
通常の親子関係では、親はわが子を無条件で好きになりますし、愛してもいます。ですが、ひとたび家庭から出て、学校、職場や社会といったところでは、基本的にはみんな元々他人の関係です。そこでは、相手を気づかったり配慮したりできないと、相手とは適切な人間関係を築くのはむずかしいと思います。特に、学校では友達関係だったり、職場では上司と部下の関係だったりした場合には、適切な人間関係を築けないと子どもはつらい思いをすることになります。人はひとりで生きてはいけませんので、他の人とどううまく折り合いをつけて生きていくかが、人生の課題となります。
そういう意味では、ペリーヌの母の子育てはとても優れていたと考えています。何しろ、ペリーヌ親子は国境を越えてずっと旅を続けてきて、会う人はすべて外国人です。国柄が違えば生きてきた考え方や文化もまったく違うのです。お互いに理解し合うのは、とてもハードルが高いと思います。ですが、ペリーヌは、母の愛情の元で素直で優しい子どもに成長します。そして、持ち前の明るさと母の教えから培われた協調性で、国境や文化を超えてさまざまな人たちとの交流のなかで、適切な関係を築いていくことができました。それが最終的に、彼女の幸せへと導いたのだと思います。
ペリーヌ物語はあくまでアニメ上でのお話ですが、仮にペリーヌが祖父と出会えていなかったとしても、ペリーヌの不思議な魅力で定住した地でも、そこで出会った人たちと適切な関係を築くことができて、やはり幸せな生活を手に入れることができたのではないかと考えています。
そう考えるとペリーヌの母マリの子育ては、やはり現在の日本でも参考になる考え方であり、発達障害児の子育てと考えても、とても有効な子育てと言えると思います。