発達障害児が就労を実現するための最低条件(2)

レベルアップする高校生

前回、就労を実現するための最低条件をクリアすれば、就労できる可能性がアップすること、最低条件のなかでも、「協調性」がもっとも重要な事項であることをお話しました。今回は、その続きです。

この条件はあくまでも最低条件ですので、できれば個々の項目についてレベルアップできれば、なおいいと思います。そのためには、まず、ここの項目がなぜ重要なのか理解する必要があると思いますので、詳しく解説します、また、個々の項目については、ほとんどが家庭でもレベルアップを図れる項目ですので、お子さんが小さいうちからレベルアップできれば、それだけ就労できる可能性がアップすると思います。

就労を実現するための最低条件
  1. 最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力、簡単な判断能力)
  2. 就労スキル(清掃の仕事の場合は、清掃に関するスキル)
  3. ある程度の体力
  4. 最低限のコミュニケーション能力
  5. 協調性

(1)最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力、簡単な判断能力)

就労の実現に、特別な学習能力は必要ないと思います。読み書き能力では、会社の仕事マニュアル(業務手順書)を読み解く力があれば十分です。そんなにむずかしい内容ではないと思います。また、簡単な作業報告書を作成する必要があるかもしれませんが、こちらも、それほどむずかしくないと思います。

四則計算能力も簡単な計算ができれば十分ですが、ひとりで買い物ができるようになればなおいいでしょう。判断能力についても、最低限善悪の判断ができれば問題ないと思います。損得の判断もできるとなおいいと思います

なお、自宅学習については、こちらもご参照ください。

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(2)就労スキル(清掃の仕事の場合は、清掃に関するスキル)

就労スキルは、特別支援学校(高等部)で学ぶことができます。ただし、学校により学べるスキルが違っていますので、事前に確認してください。なお、高等特別支援学校(高等部のみ、入学者選抜試験あり)に入学することができれば、ここでも就労スキルを学ぶことができ、さらに就労できる可能性がグンとアップします。就労を目指すならば、高等特別支援学校へ入学を目指すことが早道です。

なお、就労スキルについては、家庭内でも教えることが可能です。それはお手伝いです。最初は簡単なお手伝いから始めて、徐々に高度なお手伝い、力仕事のお手伝いもさせることをおすすめします。また、就労となれば、残業なしでも長時間(7時間くらい/日)の労働が普通です。長時間でのお手伝いも必要かもしれません。

なお、息子の場合、自宅でできる就労スキルアップの訓練として、ガンプラ作成もしていました。なぜ、ガンプラ作成が就労スキルの向上につながるかについては、こちらをご参照ください。

(3)ある程度の体力

発達障害者の就労先は、いわゆる3K(きつい、きたない、危険)といわれる職場が多いです。それでさえも、発達障害者にはハードルが高いことを知っておきましょう。一日中、立ち仕事も少なくありませんから、体力をつけさせておくことをおすすめします。

なお、お子さんに対して、ただ「運動しろ」というだけでは、効果はありません。ひとりでのジョギングやウォーキングは楽しくありませんし、楽しくないと長続きしません。学校で運動部に入部するか、親子共通のスポーツの趣味を考えてはいかがでしょうか。

なお、お子さんの体力の向上には、こちらをご参照ください。

(4)最低限のコミュニケーション能力

会社では、ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)が基本です。特に、問題が発生したときには、すぐに上司に報告して、その後の指示を仰ぐ必要があります。特に、その問題が、発達障害者本人が原因となって発生したものであれば、なおさらです。報告時に謝罪もきちんとできるようにしましょう。

後は、基本的なあいさつ(朝と帰りのあいさつなど)、何かしてもらったら「ありがとうございます」といえることができれば、それで十分です。

なお、自宅でできるコミュニケーションの練習については、こちらをご参照ください。

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(5)協調性

集団生活では不可欠のものです。もっとも重要な項目です。職場でも、これがないとうまくいかないでしょう。良好な人間関係を築けないと、会社での就労の継続は困難です。協調性を習得していないと、会社生活の前に学校生活でも支障をきたすと思います。ですから、できるだけ早い段階で、身につけさせるようにしましょう。

協調性は、職場での人間関係を円滑にするだけではなく、日常生活での友人関係の構築にも重要な役割を担っています。子どもの将来の生活を充実させるためには、職場での人間関係が良好にあるだけではなく、余暇に共通の趣味を楽しむ友達ともいい関係を築いていくことも重要なことです。仕事と余暇の両方が充実することにより、生活全体に潤いが出てきます。まさにワークライフバランスの充実が実現することになります。

「協調性」については、こちらもご参照ください。

協調性を育てていくことは、とても重要なことです。おそらく、発達障害児が今後の生涯にわたって生きていくなかで起こるトラブルの大半は、この協調性を習得することで解消します。なぜなら、集団生活では協調性が不可欠な要素だからです。集団生活は、学校生活から社会生活まで生涯続きます。人はひとりでは生きていくことができませんから、社会のなかで生きていく以上、どうしても避けてとおることができないものです。

ですが、この協調性を育てていくことは、そんなに簡単なことではありません。子どもに「協調性」を身につけさせるためには、まず、家庭内で「適切な親子関係の構築」が必要だと考えます。

「協調性を育てること」や「適切な親子関係の構築」について、どうすればいいかわからないという方に、下記の「愛される子どもを育てよう ~ガンバルお母さんへのメッセージ~」がおすすめです。ぜひ、ご一読ください。

また、就労への詳細なプロセスもご紹介しています。

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