就労を実現しよう。特別支援学級のメリットを活かし、デメリットを回避しよう。

前回は、発達障害のお子さんの就学先の環境に、流されやすい傾向にあること、特別支援学校では親御さん、お子さんにとって過ごしやすい環境なので、ぬるま湯のような状態に慣れてしまい、本来の目標を見失いがちになってしまう傾向があることをお話ししました。
- 就労を実現するための最低条件
-
- 最低限の学習能力(簡単な読み書き能力、簡単な四則計算能力、簡単な判断能力)
- 就労スキル(清掃の仕事の場合は、清掃に関するスキル)
- ある程度の体力
- 最低限のコミュニケーション能力
- 協調性
「就労を実現するための最低条件」については、こちらも合わせてお読みください。
何度も申し上げますが、お子さんの最終目標は将来の幸せな生活であり、そのためには就労の実現は不可欠です。
さらに、その就労を実現するためには、上記の「就労を実現するための最低条件」の習得が必要となってきます。
ですが、お子さんの就学先の環境のなかでその環境に慣れていくうちに、親御さんは、本来の目標を見失いがちな傾向にあると思っています。
今回は、特別支援学級編です。
就学先候補としての特別支援学級
特別支援学級は、発達障害についてわりと理解のある環境です。
さらに、普通学級とは違い担任の先生1人に対して、うけもつ児童・生徒は最大で8名(普通学級は最大で40名)ですので、先生が児童・生徒に対してサポートしやすい環境です。
ですが、特別支援学級という環境も、注意していないと親御さんが流されやすい環境です。
特別支援学級は、普通学級と特別支援学校のちょうど中間点のような位置づけです。
普通学級と違って発達障害についてある程度理解のある環境ですが、特別支援学校のように先生の人数がそろっている環境ではありませんので、特別支援学校ほどの行き届いたサポートを、期待するのはむずかしいと思います。
特別支援学級の一面では、普通学級よりは親御さんの要望を聞いてもらえるため、親御さんとしては、いろいろと先生に依存しがちな傾向になってしまうことがあります。
先生にお願いする内容が適切な内容だけなら良いのですが、本来、親御さんが家庭でするようなことまで、依存してしまうケースもままあります。
その場合、先生が対応しきれない事態になってトラブルが生じることがあります。
また、先生が頑張って子どもの成長を促しているのに、親御さんがそれを阻害しているケースもあります。
例えば、発達障害児には、偏食の子どもが多いとよく聞くことがあります。
私も以前に、子供の偏食に悩むお母さんからよく相談をうけていました。
お子さんが食べられるメニューが限られている、食事をつくってあげてもお菓子しか食べてもらえないなど、栄養の偏りから健康を害してしまうのではないかと、心配されるお母さんが少なくありませんでした。
そのなかで、あるお母さんにお子さんの学校給食での状況を聞いてみると、給食はある程度食べているようなのです。
自宅では食べられないのに、給食では偏食がある程度克服できているという奇妙な状況らしいのです。
もう、みなさんもお分かりかと思いますが、子どもの偏食を先生が頑張って矯正しているのに、親御さんがそれを無意識のうちに阻害していたのです。
ですが、別に親御さんも、好きでわが子の偏食を助長していたわけではありませんでした。
そのお母さんは、お子さんと適切な親子関係が構築できていないのでした。
そのお母さんは、あまり良くないことと思いつつ、お子さんが不機嫌になってパニックやかんしゃくを起こしたりするので、お子さんの気をそらすためにお子さんの好きなものだけを与えていたようです。
そこで、お母さんへのアドバイスとして、「偏食改善と適切な親子関係の構築のために、ごはんを食べることができたら、お菓子を食べていい」という家庭内ルールをつくったらどうかと提案してみました。
その結果は、あまりうまくいかなかったようです。
お母さんは、私の提案を徹底できずに、お菓子を少し与えてからごはんを食べることができたら、さらに追加でお菓子を与える作戦を実践したようです。
お母さんの案は、一見、悪いようには見えませんが、私は、あまりうまくいかないのではと懸念していました。
なぜなら、子どもの立場で考えれば、少しでもお菓子を与えられれば、もっとお菓子が欲しくなるのは必然だからです。
そこで、さらにごねてみせれば(かんしゃくを起こせば)お母さんが折れて、お菓子をもらえるだろうと認識してしまうのではないかと懸念していたのです。(お子さんは、理屈で明確にこのように考えていたのではなく、感覚的にまたは経験的にごねれば、お母さんが折れてくれると認識していたのだと思います)
ここでのお母さんの失敗の原因は、お子さんに対して毅然とした態度を貫けなかったことだと思います。
お子さんに対する中途半端な優しさは、かえってお子さんのためにならないこともあります。
お子さんに対して親として毅然とした態度を示すことは、子どもだけではなく親としても、とてもつらいことだと思います。
ですが、つらい思いを乗り越えて毅然とした態度をお子さんに示すこと、そしてそれを貫きとおすことも、親の深い愛情だと考えています。
本当にお子さんのことを考えたら、その最終目標は、お子さんの将来の幸せな生活です。
そのためには就労の実現は不可欠ですし、その目標を目指すには「就労を実現するための最低条件」を習得していかなければなりません。
ですが、この最低条件の習得は、そんなに簡単なことではありません。
なぜなら、それを習得していく過程では、お子さんから思わぬ抵抗をうけることが多々あるからです。
ですから、上記の偏食の矯正の失敗事例のように、お子さんから抵抗をうける都度、迎合してしまっていたら、なかなか前に進むことはむずかしいのではないかと思います。
お子さんに対する毅然とした態度も、親としての深い愛情なのです。
つらい作業ですが、頑張っていきましょう。
なお、発達障害のお子さんの成長段階では、さまざまな局面でお子さんからの強い抵抗をうけることがあります。
それは、お子さんの成長段階ではどんな子どもでも(健常児でも発達障害児でも)成長の通過点として、必然的なことなのです。
このことを知らないと、わが子はおかしいのではないかと育児ノイローゼになってしまうお母さんもいます。
ですが、まったくおかしいことではなく、むしろ自然な子どもの反応なのです。
このことを理解しているだけで、子育てはむずかしい、どうしたらいいかわからないと思っているお母さんの悩みは半減すると思います。
理屈を理解していても、子育ての大変さ自体に変わりがありませんが、こういったメカニズムがあるのだと理解できているだけで、心強さや安心感は圧倒的に違うのではないでしょうか。
お子さんの成長段階でのメカニズムおよびその際の対処方法については、こちらでご紹介しています。
きっと、あなたのお役に立てると思います。
特別支援学級で、親御さんが流されやすい原因は、親御さんが先生に対して依存傾向があることだと思います。
前述のお子さんの偏食も、お母さんが無意識のうちに先生に依存しすぎていた結果と考えます。
特別支援学級において、親御さんが先生に対して依存傾向があると、他にも起こりうる問題があります。
それは、特別支援学校でも通常のサポートをうけられない事態に陥ってしまうことがあることです。
こちらも詳細は、「愛される子どもを育てよう ~ガンバルお母さんへのメッセージ~」でもご紹介していますので、ご確認いただければと思います。
特別支援学級で本来の十分なサポートをうけられないことがある理由は、発達障害でも重度のお子さんが特別支援学級に在籍していることがあるからです。
特別支援学級は、普通学級と比較すればより少ない児童・生徒をうけもっているとはいえ、重度の児童・生徒がひとりでも在籍している場合、先生のエネルギーがすべてその子どものケアに集中してしまうため、結果的にその他の児童・生徒のケアにまで手がまわらなくなることも、特別支援学級ではよくあることなのです。
発達障害児を抱える親御さんのなかには、物理的に近い距離に健常児がいる特別支援学級を、わが子の就学先として希望されることが少なくありません。
ですから、特に、ママ友の口コミで評判の良い特別支援学級は、翌年には入学希望者や編入希望者が殺到して、学習環境が一変することは良く聞く話なのです。
そのような状況のなかで、先生への依存傾向が高い親御さんの場合、途端に厳しい状況に置かれてしまうことになります。
先生への依存傾向が高いまま特別支援学校へ編入したとしても、前回、特別支援学校での親御さんと同様に、本来の目標を見失ってしまうことになってしまいますので、注意が必要です。
状況に応じて、お子さんに厳しい対応をするのも親の深い愛情です。
親にとってはとても辛い作業ですが、頑張っていきましょう。
そして、お子さんが課題をクリア出来たら、満面の笑みで褒めて抱きしめてあげましょう。
きっと、あなたの思いは、お子さんに届いているはずです。
まとめ
特別支援学級という環境についての考察
- メリット
- 発達障害に関して、ある程度は理解がある環境
- 普通学級よりはサポート体制ができている
- デメリット
- 特別支援学級の担任の先生は、最大8名までの児童・生徒をうけもっているため、特別支援学校ほどの手厚いサポートが期待できない
- 特別支援学級の担任の先生は、マンパワー的に限界があるため、重度のお子さんが1人でも在籍している場合、重度のお子さんにかかりきりになってしまい、結果的に他の児童・生徒のケアにまで手がまわらなくなることがある
デメリットの要素が親御さんに与える影響
- 親御さんが、お子さんの就学先の環境に流されてしまう(いろいろと先生に依存しがちな傾向に)
- 「就労するのに必要な最低条件」のスキルを習得させることができなくなってしまう…
デメリットを回避
- 先生との適切な連携と、状況に応じて毅然とした態度でお子さんと向き合うことが大切です
